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イランにあるゾロアスター教寺院

 

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ゾロアスター教は、古代のイランを発祥地とし、大自然に根ざした世界最古の啓示宗教です。開祖はザラスシュトラという人物で、最高神アフラ・マズダを信仰し、アヴェスターと呼ばれる聖典を有する、善悪二元論的な宗教とされ、またこの宗教は、燃えている火に向かって礼拝することから拝火教とも呼ばれています。また、ゾロアスター教徒は、イラン(古代ペルシア)を発祥の地としていることから、パールシー教徒とも呼ばれています。イスラム伝来後のイランでは、イスラム教が主流となりましたが、それでもなお、このイラン古来の宗教は、数少ない人々によって受け継がれています。テヘラン市内にも、ゾロアスター教の寺院があり、毎日その信者の人々が訪れています。先日、ゾロアスター教徒の友人のはからいで、テヘラン市内にあるゾロアスター教の寺院を見学する機会に恵まれました。今回は、このゾロアスター教の寺院の見学についてお話してまいりましょう。

イランにおけるゾロアスター教の本拠地といえば、イラン中部のヤズドや南部のケルマーンが有名ですが、テヘラン市内にもゾロアスター教の寺院が幾つか存在します。今回見学した、テヘラン市内中心部にあるゾロアスター教寺院は、今から100年ほど前のガージャール朝時代に建てられ、イランの重要文化財に指定されています。イスラム教のモスクであれば、ドームやミナレット、青い系統のタイル張りの壁などから一目瞭然ですが、このゾロアスター教寺院は、建物の入り口に書いてある看板を見てやっと気づくほど、外見上はごく普通の佇まいです。さて、いよいよ表玄関から敷地内に入ることになりました。石だたみの中庭を通って、仏教の寺院の本堂に相当する本館に足を踏み入れます。本館の入り口には、ゾロアスター教のシンボルマークが掲げられていました。これは、プラヴァシと呼ばれるゾロアスター教の守護霊で、あらゆる自然現象を起こす神の神髄を表しており、翼を広げた鳥に乗った人物がデザインされています。さらに、ゾロアスター教の3原則「善行、善考、善言」という言葉が刻まれていました。礼拝などの専門的な事柄に触れる前に、まず人間としての倫理道徳を守ることが示されています。これは、どの宗教にも共通するものだと感じました。
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さて、本館の内部に入るところで、男性は白い帽子を被ることになっています。女性は普通のスカーフで十分とのこと。ここでも、イスラム教のモスクに入るときと同様に靴を脱ぎます。床にはイランで普通に見られる絨毯が敷かれています。建物内の中央部には、また別の壁で仕切られた別のスペースの中に聖火壇あり、火が片時も耐えることのないよう、常に炭火が焚かれています。この壁で仕切られたスペースの外には、集まってきた人々が座れるよう椅子が並べられていました。本館の内部は、白い石造りで煌びやかな化粧タイルなどは見られません。そこへ、白装束をまとい、白い帽子を被った、ムウバドと呼ばれる僧侶の方が出てこられました。今回、この僧侶の方から貴重なお話をうかがうことが出来ました。

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白装束の僧侶の方はまず、ゾロアスター教ではなぜ、特に火が大切にされているのかについて語ってくださいました。伝説によりますと、今から4000年或いは5000年ほど前、古代のイランにキヤーニー朝という王朝が栄えており、この王朝の歴代の王の1人であるフーシャング王が狩猟に出かけたときのこと。フーシャング王は、獲物を射止めようと石を投げつけますが、それは獲物には命中せず、他の石に当たります。その瞬間に火花が散ったことから、人類は初めての火の存在を知ったというものです。火が存在しなければ、食物の調理や、部屋の暖房などもできず、また夜に灯りをともすこともできません。このように、火は人間にとって欠かせないものの1つであることから、ゾロアスター教では、火が聖なるものとして大切にされているということでした。また、火の他に、空気、大地、そして水が、決して汚されてはならないものとされています。

この僧侶の方はまた、この聖火壇で常に焚かれている火について説明してくださいました。そもそも、この寺院が建てられたのは今からおよそ100年前のことですが、そのとき以来、ここで焚かれている聖火は片時も絶やされることがなかったということです。しかも、この聖火はイランのゾロアスター教の本拠地である、イラン中央部の町ヤズドから運んできたとのこと。当時、車などの乗り物を使うことなく、馬とラクダを乗りつないで、ヤズドからテヘランまで26日間かけて、ここに聖火を運び込み、そのとき以来現在まで燃え続けているそうです。お話によれば、オリンピックの聖火リレーは、ゾロアスター教で火を聖なるものとして大切にする習慣から来ているとする説もある、ということでした。なお、僧侶の方は聖火を汚さないように、白いマスクをして儀式に臨むということです。

訪問した時刻が金曜日の夕方だったこともあり、人もまばらでしたが、イスラム教国の中にあるもう1つの宗教、ゾロアスター教の厳かな雰囲気を間近に感じることができました。いつもよく目にするイスラム文化の雰囲気とはまた違った、独特の雰囲気が感じられます。

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現在、イランでのゾロアスター教徒の数は3万人から6万人と推定され、人口の面では少数派ですが、現在もイランの文化にしっかりと根付いています。例えば、イランの春の新年ノウルーズや、冬至の儀式なども、ゾロアスター教の習慣に基づくものです。さらに驚いたことに、現在イランで使われているイラン暦も、ゾロアスター教から来ているということでした。イランには、イスラム諸国全体に共通するイスラム暦も併用されており、ラマダンやイスラムの偉人の追悼や生誕日の祝日などは、太陰暦であるこのイスラム暦に沿って行ないますが、それとは別にに、太陽暦であるイラン暦も使用し、日常生活は主にこちらの太陽暦に従い、それにイスラム暦上の祝祭日や休日が加わるという形になっています。また、この太陽暦では、日本の暦に睦月、如月、弥生、卯月などと名がついているように、12の月のそれぞれに名前がついています。それから、ゾロアスター教による暦を見せてもらったのですが、月名や曜日は普通のイラン暦と変わらないものの、さらにそれぞれの日に全て名前が付けられており、この点は、日本の暦でそれぞれの日に、十干十二支による名前(ひのえ・うま、かのと・ひつじなど)といった名前がついている点に類似していると感じました。

なお、今回のゾロアスター教寺院の見学にあたりまして、スィヤーマク・ベヘルーズィヤーン(Mr.Siyamak Behruziyan)さん、パリーマー・メフルシャヒー(Ms.Parimah Mehrshahi)さんに、多大なご協力を頂きました。この場を借りて、このお二方に厚く御礼申し上げます。

 

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