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イランのラマダン月

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つい先日まで、イランを初めとするイスラム諸国は、ラマダン月と呼ばれる断食月にありました。最近は日本でも、メディアのニュースなどから、イスラム教国に関する情報がかなり報道されるようになってはきているようですが、イスラム教徒の持つ習慣の本当の目的や意義などについては、まだまだ一般の日本人の方々には知られていない部分が多いのではないでしょうか。そこで、今回は先日まで約1ヶ月間にわたって行われた、ラマダン月についてご紹介したいと思います。イスラム圏は、主に中国西部から中東・西アジア、東南アジア、北アフリカまでといった非常に広い範囲に広がっていますので、ラマダン期間中の様子も、それらの国の間によって違いが見られます。

ここでは、現在私が滞在しております、イラン・テヘランでのラマダン期間中の様子をお伝えすることにいたしましょう。

 

ラマダンやイスラムの偉人の命日や生誕日といった、イスラム教の行事は、イスラム暦と呼ばれる独自の陰暦に基づいて行われます。このカレンダーも12の月に分かれており、ラマダン月はその9番目の月となります。このイスラム暦は、1年間を354日として数えるため、西暦に照らし合わせた場合、10日ずつずれが生じてきます。即ち、今年のラマダンは6月29日から7月28日まででしたが、来年は6月19日から始まる、という風に10日早まることになります。

さて、ラマダンというと、日本では日の出から日没まで飲食が禁じられる、という風に一般的には解釈されているのではないでしょうか。しかし、実際には東の空が明るくなり始める1時間ぐらい前までには、飲食を済ませ、日没の合図が流れてくるまで飲食を控えなければなりません。ちなみに、今年は朝4時前から断食がスタートすることになっていましたので、断食をする人は、前日の夜から食事を用意しておく人が多かったようです。先ほどもお話ししましたように、最近では真夏にラマダンがめぐってくるため、日照時間が長く、飲食できない時間が非常に長いことから、日の出前の食事、とくにカロリーの高いものをしっかり取ることが奨励されています。イランでは、日の出、正午、日没時にテレビやラジオ、近くのモスクなどからアザーンと呼ばれる、アラビア語の文句による礼拝の合図が流されますので、これを元に、日々の礼拝やラマダン時の飲食を行うことになります。

ラマダン期間中は、企業や官公庁なども、就業時間を短縮したりするところが多く、またラマダン月の18日、20日、22日の夜はイスラムの聖典コーランが下されたといわれる特別な日・ガドル(またはアヒヤの夜)として、夜通しでモスクなどで祈祷が行われることから、この3日間の翌日はそれぞれ、職場の開始時刻がいつもより繰り下げられます。

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そもそも、イスラム教では、なぜ断食を行うのでしょうか。これには、きちんとした目的があります。まず、裕福な人も貧しい人も全く同じ条件で断食をすることにより、神の前にはみな平等というイスラムの教えが再確認されることになります。それから、全世界には、今もって食糧難や飢餓に苦しむ人が数多く存在することから、普段何不自由なく生活している人が断食をすることで、そうした貧しい人々の苦しみを味わい、困窮している人を助けようという精神を養うことも指摘できます。さらに、イスラムの断食は、ただ単に決められた時間内に飲食を控えるのではなく、精神修養という面が重視され、即ち、妬みや自惚れ、悪意、怨恨などといった無駄心を放棄し、普段の言動にも注意を配らなければならないとされています。例えば、断食をしていたとしても、他人をいじめたり、悪用したり、詐欺、口論、誹謗中傷などを行ったり、不平不満を口にしたり、犯罪を犯したりした場合には、当然ながら断食は無効となります。このため、イランをはじめとするイスラム圏では、ラマダン期間中は平常時よりも静粛な雰囲気となり、またある統計によりますと、ラマダン月にはほかの月よりも犯罪の発生率が下がるということです。それから勿論、これらのことに加えて、通常の礼拝も欠かしてはならず、礼拝なしの断食は無効となります。ペルシャ語の諺には、「礼拝なしの断食、嫁入り道具なしの花嫁、たまねぎの入っていない煮込みのシチュー」というものがありますが、これは日本語で言う「画竜点睛を欠く」に相当します。

 

さて、日没の合図が下されると飲食解禁となり、この時の夕食はエフタルと呼ばれます。今年のエフタルは、大体20時45分ごろで、夜8時ぐらいからは、家族と共にエフタルをとろうと家路を急ぐ人々が多くなるため、交通渋滞が始まります。又、日中閉まっていた飲食店では、ラマダン中の名物といわれるスープ系のご馳走が販売され、大勢のお客さんで賑わいます。その代表的なメニューの1つは、アーシュ・レシュテと呼ばれる、野菜と豆類、小麦粉の麺を煮込んだスープです。

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もう1つは、ハリームと呼ばれる、小麦を何時間もどろどろになるまで煮込み、七面鳥の肉などを加えたシチューです。飲食店の前には、日没の1時間ぐらい前から、これらのメニューを買い求めるお客さんの行列ができ、飛ぶように売れていきます。ある飲食店の方のお話では、平常時よりもラマダン中のほうがお客さんが多く、売り上げも高いということでした。こうした飲食店では、小学校の給食室で使うような大きな鍋でメニューを用意する為、朝から調理を開始するそうです。

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さらに、街中にあるモスクでも、エフタル食を配布するところが多く、こちらも大賑わいです。普通、こうした公共のエフタルの場では、男性用と女性用に分かれて食事の席が設けられ、大きな広間に大きなシートを何本も敷いて、パンやナツメヤシ、チーズ、野菜、紅茶、スープ系のメニュー、ズルビヤバーミエと呼ばれる、ラマダン期間中限定の銘菓などが振舞われます。さまざまな年齢層の人々、さらにはイスラムの聖職者の方が一般のお客さんと食事を共にする光景も見られ、その日の断食を終えてほっとするひと時といえるでしょう。

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ところで、このエフタル食ですが、それほど豪華なメニューを出す必要はありません。断食のもう1つの目的として、自分が飲食しなかったことで出来た余剰な金銭や食料を、恵まれない人に施すことがあり、ある聖職者の方のお話ですと、この意味でエフタル食に豪華メニューを出すのは本来の目的に反する、ということでした。今から1400年ほど前、預言者ムハンマドの時代のエフタル食は、パンとナツメヤシとチーズだったとか。しかし、何はともあれ、大勢の人々と食事を共にすることは大変楽しいことです。私も、つい先日、近くのモスクでのエフタルに呼ばれ、ラマダンの雰囲気を味わってきました。ちなみに、このエフタル食は、振舞った側も、振舞われた側にもご利益があるということです。また、家屋親戚や、友人・知人をエフタルに招く家庭もあり、これも断食と同様にご利益があるとされています。

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イランのエフタル食の名物の1つに、ショオレザルドという、サフランで染めた、甘味のある冷たいおかゆがあります。これは、長時間の断食の後に、胃に負担が掛からないよう、軽食から始める、という原理にかなったものです。米を長時間煮込んで柔らかくし、砂糖とバラ水で味を調え、サフランで色付けしたものが一般的ですが、装飾として表面にシナモンで模様や文字を書いたりすることもあります。

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そして、専門の天文学者により新月が確認された時点で、ほぼ1ヶ月間に渡ったラマダンは終了となります。ラマダンの終了は、テレビ、ラジオなどにより、ラマダン月の最後の日の夜に正式に政府から発表され、その翌日の断食明けの祝祭をもって、フィナーレとなります。この日には、各モスクで断食明けの礼拝が行われると共に、街中のあちこちでフェトリーエと呼ばれる寄付金を募る募金活動が行われ、この寄付金を納めることで、断食が完結し、これも貧しい人々への支援に使われるということです。

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こうして見てくると、イスラム教で行われるラマダンは、単なる断食ではなく、精神修養やモラルの修正、さらには助け合いをも兼ねている、非常に奥深い意味を持ったまさに聖なる月だといえるのではないでしょうか。

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