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イランのサクランボ生産

日本の4倍半もの国土面積を誇るイランは、「イラン=砂漠」という日本人の間に一般的に定着しているイメージとは逆に、その気候風土の多様性から実に多種多様な植物が生息し、また農産物の栽培もさかんです。イランでは、豊富な種類の果物が栽培されており、市場や商店が四季折々の果物で彩られ、旬の果物を安価で大量に仕入れてジュースやシャーベット、ジャムを自宅で作る、ということも決して珍しくありません。そこで、今回は丁度イランで現在旬を迎え、収穫作業の始まっているサクランボについてご紹介してまいりたいと思います。

 

統計によりますと、世界全体では年間およそ1800万トンのサクランボが生産されており、このうちイランは年間生産量が20万トンにおよび、この数字はトルコとアメリカに次いで世界第3位だということです。また、イラン国内での主だったサクランボの生産地は、テヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州アラムート地区、テヘラン東部に隣接したセムナーン州、イラン北西部・東西アーザルバーイジャーン両州、西部ハメダーン州、ロレスターン州などとなっています。また、イラン国内で収穫されたサクランボは、国内市場に出回ると同時にかなりの量がイラク、ロシア、アラブ首長国連邦、アフガニスタンなどの近隣諸国に輸出されているということです。

今回はある伝で、西アーザルバーイジャーン州オシュナヴィーエ市でのサクランボの収穫に関する情報を入手することができました。以下に、写真で現在真っ盛りのその様子をご紹介してまいりましょう。

オシュナヴィーエ市内のあるサクランボ園で、大量に実をつけているサクランボの様子。日本で見られるサクランボよりも粒のサイズがいくらか大きいようです。また、このサクランボ園では複数の種類のサクランボを栽培しており、粒の色はもちろん、実のつき方も違っています。

 

日光に当たりよく熟したサクランボを、1つ1つ丹念に摘み取ります。

 

サクランボは、木のかなり高いところにも実をつけるため、収穫・摘み取りに当たっては梯子が必要になることもしばしばです。

 

梯子の上まで上って、足元に気をつけながら、かつサクランボの粒をいためないよう注意して1粒ずつ丁寧に摘み取ります。

 

しかし、枝についているサクランボのみならず、地面にも相当数の実が落ちています。これも大事な果実ですから、果肉の傷んでいないものを探してかき集めます。

摘み取ったサクランボは、まずバケツに入れて運び、それから出荷用の籠に入れます。

 

これだけたくさん収穫されたサクランボのなかには、当然ながら品質や粒の大きさなどの点で不適切と思われるものもあります。摘み取り後のより分け作業も重要になってきます。

このサクランボ園では、相当な量のサクランボが収穫されるため、摘み取ったサクランボを入れて運ぶ籠も、数多く用意されています。

 

出荷用籠に入れられたサクランボ。これらは国内市場のほか、国外にも輸出されていきます。

 

なお、このサクランボ園では、収穫した摘みたてのサクランボをその場で、店頭販売よりも幾分安く直売しています。

 

今回取材協力をお願いした、オシュナヴィーエ郡農業局の関係者A・Hさんは、この地域でのサクランボ生産に関して、次のように語ってくださいました。

「オシュナヴィーエ郡内には複数のサクランボ園が存在しており、その総面積は350ヘクタール、またこれらの園での就労により生計を立てている作業スタッフ数は5000人にも上ります。テヘランよりも気候が冷涼なこの地域でのサクランボの収穫シーズンは、夏の初めにあたる丁度今ぐらいの時期からおよそ1ヵ月半ほどです。郡内で収穫されるサクランボの総量はおよそ1500トンほどで、粒が大きく、風味に優れています。これに加えて近隣の州で生産されたサクランボも合わせた、かなりの量がロシア、アフガニスタン、パキスタなどの近隣諸国やペルシャ湾岸諸国に輸出されています。因みに、オシュナヴィーエ産サクランボのうち、国外に輸出されるのはおよそ500トンほどかと思われます。

サクランボには、黒、赤、黄色、ピンクやオレンジ色に近いものなど、様々な種類がありますが、郡内で栽培されるもののうち最も多いのはクロサクランボです。

なお、昨年のこの時期には、オシュナヴィーエ・サクランボ祭が3日間にわたって開催され、地元産のサクランボやリンゴの展示・直売、並びにこの地域の農業・観光業などについて紹介するイベントが開催されました。今年はコロナの影響で開催できませんでしたが、来年は是非開催できるよう願っています」

そして、サクランボ生産をはじめとする農業全般の今後の展望などについては、次のように語って下さいました。

「イラン産のサクランボは、粒が大きく品質が優れていることから、最近ではタイをはじめとする東南アジアの国から、在イラン大使を通してこれらの国への輸出申し入れがあったと聞いています。ちなみに、こうした国に輸出されるサクランボは、国内販売価格の7倍もの値段で取引されるということです。また、特に昨年は例年よりも収穫量が非常に多かったため、国内での市場供給過多が懸念されていましたが、かなりの量が輸出に回されたおかげで、そのような事態は回避されました。

今後の展望に関して言えば、国家の資本維持のためには農業がもっと重視されるべきだと思います。実際に、農業がイランの第5次開発計画の主軸に据えられていることからも、これまで以上に農産物の品質や生産量の向上、さらには国内余剰分の輸出が促進される必要があります。と申しますのは、インドやパキスタン、アフガニスタン、ペルシャ湾岸諸国や中央アジア諸国、トルコなどの近隣国でイランの農産物・果樹への需要が高まっており、造園による農産物の輸出とそれによる外貨収入につながるからです。現在、新型コロナウイルスの影響で、観光、運輸、工場生産、サービス業など産業の大規模な部分が打撃を受けています。そうした現状に鑑みて、経済活動の本格的な回復・再開にはまだ時間がかかると思われる中、例年と変わらない大自然の営みを活用し、できるところから活動をはじめ、早急の経済活動の再開につなげたいと思います」

これまで3回にわたり、イランで見られる季節の自然に関してお伝えしてまいりました。季節の花の開花であれ、果実の実りであれ、自然のサイクルは世界情勢にはかかわりなく確実にめぐってきます。世界は今なお新型コロナウイルス禍の只中にあり、一部の国や地域では第2波、第3波の発生のニュースも聞かれます。それに伴い、ウイルスの完全な収束や経済活動の全開には数年を要するとの声もある一方で、こうした四季折々の自然現象は何かほっとさせられるものがあるのではないでしょうか。

コロナ危機の最中での、こうした「できるところからの努力」が数多く集まって大きな力となり、全世界での経済活動の全開・復旧に導かれることを祈願しつつ、今月のレポートを締めくくりたいと思います。

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