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イランにおける未熟なブドウの摘み取りとその効用の数々

 

これまで何回かにわたり、広大な国土や気候風土の多様性が生み出す、イランの自然の恵みについてお話してまいりました。現在、イランの広範囲の地域では秋の味覚の時期に向けてブドウが着実に成長しており、これからおよそ2,3ヵ月後に、熟した各種のブドウが市場に出回りますが、その時期を前に現時点で、未熟なブドウの摘み取りが行われています。イランでは、いわゆる普通の完熟したブドウを食するほかに、未熟なブドウの汁が絞り取られ、調理などに使われています。そこで、今回はそのシーズンにちなんで、イランでの未熟なブドウに関する話題をお届けしてまいりたいと思います。

 

イランでは、ブドウは天国の果実とも称されており、熟した果実以外にも、未熟なうちに摘み取られて広く一般に使用されています。一方、日本国内の市場ではまずお目にかからないと思われる、未熟なブドウですが、実は栄養学的、医学的にも非常に大きな効能を有しています。その主な効果として、高脂血症の改善をはじめ、体内の殺菌効果、痩身効果や肥満の治療、胃腸内の殺菌および寄生虫の駆除、ビタミンC欠乏症の改善、消化器官の機能保全、リューマチや坐骨神経痛、腰痛、糖尿病の治療効果、ガンや高血圧の予防効果などが指摘されています。ただし、こうした医学的効果の一方で、未熟なブドウをそのままストレートで摂取することは避けた方がよいそうです。さらに、神経衰弱のある人は摂取しないほうがよいとされています。

こうした数々の効果を有する未熟なブドウは、適切な時期に早めに摘み取り、汁を絞って調理用の果汁として販売されているほか、イランではピクルスにされることも多く、食欲をそそり食物の消化を助ける付け合せとしても食卓に登場します。ほかにも、サラダのドレッシングを作る際に、その果汁を搾り取ったものが、酢やレモン汁の代わりとして使用されています。

なお、イランでは未熟なブドウの摘み取りの時期に降る雨はグーレシュール(グーレ=未熟なブドウ+シュール=洗い)と呼ばれ、この時期の降雨を表す言葉として知られています。

 

しかしやはりなんと言っても、イランでの未熟なブドウの使い道として最も一般的なのは、その果汁を煮込み料理などに入れて風味を整える、調味料としての用途ではないかと思われます。未熟なブドウの果汁は市販されているものも数多く出回っていますが、シーズン中に特定の業者さんなどを通じて未熟なブドウを入手し、自家製のものを作ることももちろん可能です。この場合は、市販されている工場生産のものとはまたちがった、独自の風味のものができます。それではここで、未熟なブドウの果汁の取り方、作り方について簡単にご紹介してまいりましょう。

 

1.なるべく種のないブドウをする。ブドウが房のままの場合、まず茎や茎につながる細い芯を1つ1つ丹念に取り除く

2.茎や芯などを取り除いたブドウをよく洗って、埃などを完全に取り除き、ざるに空けて水を切る

3.洗浄したブドウを綿布などの上に広げてよく乾かす

4.乾いたブドウをジュースミキサーにかけ、目の細かいふるいなどでろ過する

5.取れた果汁をガラスの広口ビンなどに入れて数時間置き、沈殿物が沈むまで待つ

6.上澄み液のみを保存用のビンに移し変え、空気が入らないよう蓋をしっかり閉めて、さらにビンの口の部分をビニールなどでしっかり覆っておく

 

 

 

テヘランから150キロほど離れたガズヴィーン市近郊にある工房での、未熟なブドウの果汁採取の様子。

 

イラン南西部ブーゼスターン州での未熟なブドウの摘み取りの様子。この地域ではアラブ系住民が数多く居住しており、作業員にもアラブ系の人々が多く見られます。

 

なお、筆者が在住しておりますガズヴィーン州は、イランでも有数のブドウの産地として知られ、行政区画上4つの郡に分かれています。そのうちの1つにはターケスターン群があり、ターケスターンとはペルシャ語でぶどう園を意味します。以下は、ターケスターン郡での未熟なブドウの摘み取りの様子です。

 

今回は、ターケスターン郡農業局の主任を務めておられるM・Rさんにお話をうかがうことができました。M・Rさんは、次のように語っています。

「郡内には、総面積にしておよそ2万5000ヘクタールにも達する多数のぶどう園があります。これらのブドウ園で収穫される未熟なブドウから、今年はおよそ7トン相当の果汁が生産されることが見込まれています。ただし、未熟なブドウのうちに摘み取られるのは全体の30%ほどで、残りは秋の完熟ブドウのシーズンを待つことになります。成熟したブドウは、そのまま生食用となるほか、エキスの抽出や干しブドウなどに利用されます。なお、この地域で生産されるブドウは、近隣の州のほかにも、ロシアなどの外国にも輸出されています」

 

和食は世界有数の健康食とも評され、世界各地に日本料理レストランが進出して和の食文化の普及伝播に大きく貢献しています。しかし、イランにも、日本ではまずお目にかからないと思われる食材が、健康・食欲増進に大きな役割を果たしています。広大な国土と多種多様な気候風土を誇るイランには、このほかにも豊富な食材が存在していますが、それらについてはまた別の機会に譲りたいと思います。

今後ともまた、折に触れてそうしたイランの豊かな食の文化をご紹介してまいりたいと思います。どうぞ、お楽しみに。

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