イラン中部の名所アブヤーネ村とその周辺を訪ねて(2)

 

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今回も前回に引き続き、イラン中部の名所旧跡についてご紹介してまいります。今回は、前回訪問しましたイスファハーン州のアブヤーネ村から北西に約70キロ離れたカーシャーン、さらにはお隣のマルキャズィー州にまで足を伸ばしてみたいと思います。

イラン式庭園の1つ・フィーン庭園
イスファハーン州の町の1つであるカーシャーンは、毎年春になると、バラ水とバラの香水を作るイベントが行われ、バラ水の町として知られています。しかし、ここには他にも数多くの名所が存在しており、今回はその1つであるフィーン庭園を見学しました。この庭園は、ユネスコの世界遺産にも登録されているイラン式庭園の1つです。フィーンという名称の由来には諸説がありますが、一説によりますと、この町の人々の多くが被っていた、フィーネと呼ばれる赤いトルコ風の帽子に由来するということです。また、この庭園は、「王の庭園」という別名もありますが、これは特定の王に因むものではなく、敷地の総面積が2.5ヘクタールと非常に大きいことから、一般的な王の偉大さにたとえて、この別名がつけられました。また、歴史的にはこの庭園は1200年前、即ち当時イラン南東部スィースターン地方にサッファール朝が起こった時代には既に存在していたと言われています。ですが、敷地内の建物や庭園としての装飾などは、今から500年ほど前のサファヴィー朝の時代のものだということです。その後、ガージャール朝のファタフアリー・シャーの時代には、大幅な増築作業が行われました。しかし、ファタフアリー・シャーの死後は、庭園内の建物や植木の手入れがなされず、放置されていた時期がありました。しかし、今から70年ほど前に国の文化財に指定されてからは非常に注目を集め、メンテナンスに再び力が入れられるようになりました。

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さて、玄関口から敷地内に足を踏み入れてみると、イトスギを主体するのどかな木立の間を人工の小川が流れ、人工の大きな池に繋がっています。これらの池や小川に使われている水は、この庭園のそばのスレイマニーエと呼ばれる泉から調達され、人工のポンプなどは使われていないということでした。池の周りにはベンチが置かれ、芝生やバラの花などが丹念に植えられています。よく知られた名所だということもあり、家族連れをはじめとする多くの人々が訪れていました。

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人工の小川で子どもを遊ばせている夫婦、ベンチに座ったり、木立に寄り添ったりして写真撮影をしている若いカップルの姿も見られました。その人工の小川を辿っていくと、大きな池に行き当たりました。よく注意してみると、この四角い池の中央には穴が開いており、また池の中にはたくさんのコインや紙幣が投げ込まれています。

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聞くところによると、これはファトフアリーシャーの池と呼ばれ、この池にお金を投げて、それがうまく中央の穴に入った場合は、願い事が叶うとのこと。さらに目を引いたのは、この池を覆うように建っているあずまやの内部の装飾の見事さでした。イスラム的な幾何学のデザインを基調とし、白地やベージュ色の下地に、主に赤と青で草花や鳥の模様が細かくびっしりと施されています。

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このようなところにも、当時の王朝時代の華やかさが見て取れました。そして、この庭園で見逃せないもう1つの見所は、ガージャール朝の大宰相アミールキャビールが暗殺された場所として有名な浴場です。

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この浴場のある建物は、先ほどのあずまやを通り過ぎて、敷地のさらに奥まった一角にあります。内部の造り全体は、一般的なイスラム建築となっており、壁の上半分は白地で、下半分はブルーをメインとした幾何学模様が施されています。現在でいう浴槽らしいもののほか、脱衣所として使われていたスペースなどがありました。しかし、実際にアミールキャビールが暗殺されたとされる場所は、長方形の小さなブルーの池のある場所でした。

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さらに、人形などを使って、当時アミールキャビールが暗殺された様子を再現しているセクションもありました。

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イランの花の都マハッラート
さて、イスファハーン州内の見所の見学を終え、今度はお隣のマルキャズィー州に向かいました。今回、この州でのお目当ての1つはイランの花の町マハッラート行政区です。ここは、気候が温暖であることと、水質がよいことから、観賞用の植物をはじめとするイラン最大の花の生産地とされ、イランのオランダとも言われています。地元の方のお話によりますと、イランでの花の栽培は85年前にさかのぼり、当時テヘランに滞在していた花の栽培業者のオランダ人が、オランダから花の種を持ち込んだのが始まりだということです。また、このオランダ人に雇われ、マハッラートから出稼ぎに来ていたヤフヤー・ハーンという人物が、故郷のマハッラートで職業としての花の栽培を広めたことから、この町に花の栽培が定着したとされています。この町には現在、合計でおよそ1000ヘクタールに上る300のビニールハウスがあり、年間で2200万本もの花をイラン国内に出荷しているということです。この町で栽培されている花は、カーネーション、グラジオラス、チューベローズ、菊、あやめ、サボテン、アネモネ、バラ、サトイモ科の植物ポトス、ハイビスカスなど120種類にも上るとされています。

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いざ、マハッラートの町に入ると、延々とたくさんのビニールハウスが並んており、大量の花や観賞用植物が栽培されていることが伺えました。そのうちのビニールハウスの1つへと案内され、中に入ってみると、色とりどりのバラの花をはじめ、各種のサボテンやコリウス、ペチュニアなどが所狭しと並んでいます。地面に植えられているものもあれば、鉢植えのものもありますが、いずれもよく手入れされ、多くの作業員が手入れを行っていました。また、訪れる人の波も絶えることがなく、次から次へと見学者が入ってきては、楽しそうに花を眺め、写真をとったりしています。

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そして、中には大量に花を買い求めていく人々も見受けられました。色鮮やかに咲き乱れる花々を眺めていると、マハッラートはさながら、中東の花の都と呼んでも相応しいのではないか、という思いに駆られました。

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アーテシュクーフのゾロアスター教寺院
さて、今回の旅行で注目すべきもう1つの見所は、マハッラート行政区のニームヴァルというところにあるアーテシュクーフのゾロアスター教寺院の廃墟です。この拝火教寺院は、1500年ほど前のサーサーン朝時代のものと言われ、アーテシュクフーフ山の斜面に建てられていることから、この山の名前がそのままこのゾロアスター教寺院につけられています。
いざ到着してみると、荒涼とした高台にレンガと思われる素材で出来た、太い柱のようなものが正方形を造るように4本建っています。高さは5,6メートルはあるでしょうか。さらに遠くからよく見てみると、いずれも内側に向けて湾曲しています。このことから、本来はこの4本の柱により、1つのドームのようなものが形成されていたと思われます。柱と柱の間隔は5メートルほどと思われ、柱の背後にはレンガ造りの壁のようなものと、最上部に聖火をともしたといわれる塔のようなものが建っています。この塔と壁の高さは、先ほどの4本の柱の半分より少々高い程度です。

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現地の観光ガイドからのメッセージ
マルキャズィー州文化遺産・伝統工芸・観光局に所属し、現地ガイドを務めておられるハミード・レザー・マスウーディーさんは、次のように語っています。

―この拝火教寺院はいつごろ、どのような経緯で建設されたのでしょうか?
私は、マルキャズィー州文化遺産・伝統工芸・観光局専属の観光ガイドをしています。この拝火教寺院は、今から1500年ほど前のサーサーン朝時代のものとする説が有力ですが、それよりもっと前の2500年前のものとする見方もあります。この拝火教寺院の廃墟を調査した結果、この寺院が天文学的、地理学的に正確な観測のもとに建設されたことが分かりました。それは、全体にほぼ正方形となっているこのゾロアスター教寺院の敷地の四方が、正確に東西南北を向いていることによります。ゾロアスター教は拝火教とも呼ばれるとおり、光や燃えている火を神聖なものと見なす宗教であり、この寺院も太陽が南中する南側を向いて神を崇め、礼拝が済むと北向きの出口から退出するように設計されていました。また、このような山の斜面に造られたのは、やはり拝火教にとって重要な太陽の光により近い場所で礼拝行為をするためと考えられています。

ー日本人の皆様に、一言メッセージをお願いいたします。
私たちは、平和の民として知られる日本国民の皆様を、心より歓迎いたします。イランは、悠久の歴史を誇り、ユネスコ世界遺産を含む数多くの文化遺産を有しています。日本の皆様にも是非、ご自身でイランを訪れていただき、イランの豊かな歴史や文化を味わっていただきますことを切に願っています。

これまで2回にわたりお届けいたしました、イラン中部アブヤーネ村とその周辺の見所はいかがでしたでしょうか。今後も随時、まだまだ沢山存在するイランの見所をご紹介していく予定です。どうぞ、お楽しみに。

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