イランからの花便り・続編;ダマスクローズの開花シーズンに寄せて

先月のこのレポートでは、イランに自生する稀少植物の1つ・逆さチューリップの開花の様子をお伝えしました。今月から来月にかけては、イランの生産品として有名なローズウォーターの原料となる、ダマスクローズの開花シーズンに当たり、またちょうどこの時期にはバラの花の摘み取り作業やバラ香水作りが盛んに行われます。まだまだ新型コロナウイルスの勢いが衰えないイランですが、大自然の営みは例年と変わりなく繰り返され、「 年々歳々、花相い似たり」と言われるとおり、本年も中部イスファハーン州などを中心に、ダマスクローズが色鮮やかに咲き乱れるシーズンがやってまいりました。ダマスクローズは確かに、ローズウォーターの原料ではありますが、大自然に咲き乱れるその様子も実に見ごたえがあります。今回は、色鮮やかなダマスクローズの開花の様子と、その摘み取り作業に携わる関係者からのメッセージをお届けしてまいりましょう。

 

「美しい姿」「照り映える容色」などの花言葉を有するダマスクローズは、花の女王とも評され、見た目のよさもさることながら、その甘く芳醇な香りでも人気を集めています。クレオパトラもこのダマスクローズを入浴剤などとして愛用したといわれ、古くから人間と深いつながりのあるこのバラのイラン各地での開花の様子を、以下の写真によりご覧ください。

白雲のもとに開花したダマスクローズ(テヘラン東部セムナーン州)

 

青空に映えるダマスクローズ(東部・南ホラーサーン州)

 

      一面のダマスクローズ(中部ヤズド州)

 

淡いピンクの中に濃い桃色のものも混在(南ホラーサーン州)

 

開花直前のつぼみ(北東部マシュハド)

 

中部イスファハーン州カーシャーン近郊にて

 

丈が長く伸びたダマスクローズのトンネル(中部マルキャズィ州ホメイン)

 

緑豊かな山を背景に(カーシャーン近郊バルゾク村)

 

アヴァーン湖畔にて(テヘラン西部ガズヴィーン州)

 

ミツを集めるミツバチ。こうしてできた蜂蜜も名産品として販売されます(カーシャーン近郊ガムサル村)

 

甘い匂いにつられて、でしょうか。天道虫もやってきました(カーシャーン近郊バルゾク村)

 

また、一口にダマスクローズと言っても複数種が存在し、花びらの色合い、色彩の濃淡や花びらの数など、微妙な違いがあります(南部ファールス州シーラーズ近郊にて)。

 

以上のように魅力たっぷりのダマスクローズですが、ご存知のとおりバラには棘があります。ダマスクローズの棘も非常に鋭いものが数多くついており、摘み取りの際に注意する必要があります(中部マルキャズィ州にて)。

 

さて、ここからは現在真っ盛りのダマスクローズの摘み取り作業に携わっている方々の様子と、これらの方々からのメッセージ・コメントをご紹介してまいりましょう。

カーシャーン近郊ガムサル村;M・Tさん 「コロナ危機の中でも、神様はちゃんと花を咲かせてくれています。どんな悪いときでも、何かしらいいことはありますよ」

 

南部ファールス州シーラーズ近郊;S・Oさん 「こういう時でもお仕事があって幸せ。感謝の心を持つことが大事だと思います」

 

中部バルゾク村;F・Kさん 「どんな時でも、何か自分にできることがあるはず。それをしっかりやりましょう。今頑張ったことが、後できっといい結果になって帰ってくると信じています」

 

中部ヤズド州の高校生S・Hさん; 「コロナで学校にも行けず、友達や先生に長い間会えなくなるのは本当に辛かった。でも、いつもある何かがないことに耐える訓練になったかもしれません。友達や先生に普通に会える日が待ち遠しいです」

 

カーシャーン近郊;M・Kさん 「こうして摘み取ったバラが皆さんの役に立つことを願っています。神様は1人1人の努力をちゃんと見ていてくださいますよ」

 

北東部マシュハド市近郊;P・Mさん 「コロナ危機といえど、絶望してはいられません。バラの最盛期を逃しては大変です。とにかく行動あるのみ!」

カーシャーン市近郊の保育園児T・Bちゃん; 「来年は色んなところから沢山のお客さんが私たちの町に来て欲しいです」

 

先のT・Bちゃんのお母様; 「子供の存在が励みになります。家族のためにも鬱々としてはいられません」

 

北部ギーラーン州A・Kさん; 「何か困難が起きても、必ず神様はそれに耐える力と手段を与えてくださいます」

 

東部セムナーン州ダームガーン近郊のF・Hさん;「今一番苦しいと思ったら、ゴールは近いです。まさに、一番暗いのは夜明け前です」

バルゾク村の小学2年生A・Fさん; 「お母さんがバラの花で作るジャムが一番好きです」

 

中部マルキャズィ州L・Hさん; 「人生は、試練とそれに耐えた恩恵・報酬の繰り返しです。現在のコロナの支援を乗り切れば、きっと神様から素晴らしいご褒美がもらえると信じています」

 

南東部スィースターン・バルーチェスターン州のK・Bさん;「コロナの前はこうして仕事をするのが当たり前だと思っていました。でもコロナで多くの人々が失業し、また亡くなっている事実を目の当たりにして、今までの自分は感謝の気持ちが足りなかったと思います。仕事に行けること、家族や友人、作業場で同僚に会えることといった、普段なら何でもないことの有り難味を感じています」

 

東部セムナーン州ダームガーンのP・Kさん一家;「コロナで遠出はもちろん、ご近所づきあいもままならなくなった現在、こうして家族が皆無事にいられることを何よりも喜ぶべきではないでしょうか。自分や家族の誰かがコロナで入院、などということにならなくてよかったです」

 

中部マルキャズィ州ホメインのS・Jさん;「今までは、外での仕事が億劫に感じることもありました。でも今は、自分はコロナに感染しないで仕事ができていることに感謝してます。コロナで入院するのと、仕事とどちらを選ぶかと言われたら、もちろん入院は絶対に御免です。神様有難う!と言いたいです」

 

カーシャーン近郊バルゾク村の作業員組合の皆さん;「生きていればなんとかなりますよ。現状に悲観することなく、現実を受け止めた上で、自分に何かできることを見つけ、それに打ち込むこと。それから、今心配してもどうしようもない先のことを考えすぎないことです。神様が何とかしてくれますよ!」

 

さて、これらのメッセージの冒頭にご登場いただいた、カーシャーン近郊・ガムサル村のM・Tさんが、ほかにも大変興味深いコメントをくださいましたので、ここにご紹介させていただきたいと思います。

「このたびのコロナ危機は100年に一度とも言われ、9・11同時多発テロやリーマンショック、SARSの流行などよりもはるかに大規模で打撃が大きいとされているようです。また、このウイルスの発生源についても人工的なものであるとかないとか、色々な意見が出ており、またこの問題に関してある国が別の国に非難の矛先を向けるといった事態が生じています。しかし、日ごろから大自然にかかわっている私から見て、今回のコロナ問題は、神がこれまでの人間世界の腐敗ぶりにお怒りを感じて下した、天罰・試練のようなものに思えてなりません。世界を見渡しても、特定の国だけが専横な態度に出てそのほかの国をいいようにあしらう、特定の国を一方的に苛めるなど、あってはならない事態が多々見受けられるように思います。また、自分の身近におきましても、然るべき資格もない人物が権力を笠に着て周囲に威張り散らすなど、許されない行動が後を絶ちません。私が思いますに、コロナ危機により、それまで存在していたあらゆる誤りや虚偽、不当で不適切なもの、あってはならないもの、誤った力関係といったものが全て消去され、本当に価値あるもの、正しいものだけが残る、そんな気がします。いうなれば、今のこの時期はそれまでとは全く違う時代を迎える前の、いわば過渡期なのかもしれません。いずれにせよ、この試練を耐え抜いた人は本当の勝者であり、必ず神からの報酬があると思います。むしろ、この危機をある意味でのチャンスと捉え、移動や行動が制限されても後退することなく、何かしら目標を定め、今できることを見つけ、いつもとは違う行動を起こしてみてはいかがでしょうか。この困難にめげることなく、心を1つにして乗り切りましょう。出口のないトンネルはありません。心から皆様を応援しています」

 

新型コロナウイルスは、イランのローズウォーター製造業にも少なからず影響を与えており、この業界に携わる人々も大きな打撃を受けている、といったニュースも入ってきています。これらのメッセージを下さった方々はいずれも、そうした厳しい状態の中で作業を継続し、正直なところ明日のことも分からない、という方も多くいらっしゃいました。しかし、そのような中でも希望を失わず、逆に力強いメッセージを寄せてくださった皆さんには本当に頭が下がると同時に、そのメッセージには本当に勇気付けられる、心に響くものがあると思われます。これらの方々の今後の成功、そしてその素晴らしいメッセージが読者の皆様にも共感していただけるものとなり、またコロナ危機の一刻も早い収束を心より祈願いたしまして、今月のレポートを締めくくりたいと思います。

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