日本の建国記念の日に当たる2月11日は、イラン暦バフマン月22日に相当し、イランでは全国各地で1979年のこの日に達成されたイランイスラム革命勝利記念に関するイベントや式典が大々的に実施されます。今年はあいにく、北部や北西部を中心とした複数の州では積雪や雨模様となりましたが、そのような中でも市民の大群衆が傘を指しながらの大行進を行っていたのが非常に印象的でした。今月は、そうした悪天候の中でのイラン市民の大群衆による革命勝利記念行進の模様をお届けしたと思います。
今回は特に、先月イラクにてアメリカ軍の空爆により殉教したイランイスラム革命防衛隊ゴッツ部隊のソレイマーニー司令官の殉教40日忌を2日後に控えての行進実施となったことから、例年とは一味違う様相を呈していたように思われます。イスラム革命の創始者ホメイニー師や現最高指導者のハーメネイー師の肖像画に加えて、ソレイマーニー司令官の肖像画が掲げられていたことは、今回のこのイベントの大きな特徴の1つとも言えるのではないでしょうか。そこで、まずはこの点にスポットを当ててみたいと思います。以下はテヘラン西部ガズヴィーン州、北部ギーラーン州での行進の様子です。
大人のみならず、子供たちも雪の中でソレイマーニー司令官の肖像画を掲げていました。ソレイマーニー司令官は、西アジアでのテロとの戦いで特に功績を残した著名人とされています。人は死して名を残し、虎は死して皮を残す、という諺がありましたが、まさにこの人物こそ、この諺に相応しいといえるのではないでしょうか。
ソレイマーニー司令官が、アメリカ軍の空爆によりテロ暗殺されたことから、肖像画のそばで星条旗を燃やすという、アメリカへの仇討ちを表現したと見られるパフォーマンスも見られました。また、様々な年齢層や階層の人々がソレイマーニー司令官の肖像を掲げていたことから、この人物が幅広い層の人々に支持されていたことが見て取れました。
そもそも、1979年のイスラム革命はアメリカの傀儡政権とも評された前政権を打倒した、と考えられていることから、毎回かならず反米スローガンが叫ばれていることは事実です。特に今回は、先だってソレイマーニー司令官がアメリカ軍によりテロ暗殺されたこともあり、大人も子供も揃って特に強く反米精神をアピールしていたようです。
イラン軍司令官がアメリカに暗殺された後、アメリカとイランの緊張は一時期最高潮に達し、軍事衝突の危険も指摘されました。しかし、双方ともにこれ以上の事態の悪化を回避すべく、表向きには矛を引っ込めました。そのような中でも、アメリカ現政権のトップを槍玉にあげる市民の感情はやはり色濃く現れていました。
しかしやはり、何と言ってもこの革命記念行進で最もアピールされるべき要素の1つは、この革命の創始者や現在の最高指導者への忠誠心や支持、愛国心ではないでしょうか。イランの国旗を構成する緑、白、赤の三色を基調とした愛国心のアピールは毎年恒例のもので、性別、年齢を問わず、この精神はどの集団にも見事に反映されています。
最初にお伝えしたとおり、今回は特に雪の降りしきる中での大群衆の行進が印象的でした。革命の精神をアピールするためには、雪も寒さも何のその、まさに雨が降ろうと槍が降ろうとひたすら行動、という気概が見て取れました。この気力があれば、どのような困難に遭遇しようとも、大抵の事はやってのけられるのではないでしょうか。このような精神は、ぜひとも見習いたいものです。
とにかく、革命勝利記念大行進に参加した人々を見ていると、このイベントのために一丸となり心を1つにして結託している様子が伺えました。特に、制裁やアメリカとの緊張、そして最近では新型コロナウイルスの蔓延など、一難去る前にまた一難というような状態の中でも、イラン人としての信念を貫き、自らの信条やアイデンティティをきちんと持って、それを国際社会にアピールするのは大変勇気の必要なことではないかと思われます。革命勝利記念行進は毎年恒例の行事ですが、その年によって、その際の時勢を繁栄し少しずつ雰囲気の違ったものとなっています。例年通りの「最高指導者やホメイニー師への忠誠」、「反米、反イスラエル」、「愛国心」というモットーに加えて、今年は故ソレイマーニー司令官への追慕の念が加わった感があります。また、数多くの州では、積雪や吹雪に見舞われる厳しい気候条件の中での開催となりました。ですが、最後の写真の少女が掲げるスローガンのように、今後どのような厳しい条件下に置かれようとも、イラン国民は自らのアイデンティティへの誇りと愛国心をもって、革命の精神を世界に、そして後世にまで伝えていくことでしょう。