料理

ブドウの葉を使ったイラン料理・ドルメ

丸く包んだドルメの例

細長く包んだドルメの例

イランでは現在特に、筆者の居住しているテヘラン西部ガズヴィーンなどを中心に、ブドウが旬を迎えています。これまでの拙レポートにおきまして、各地のブドウの収穫の様子のほか、干しブドウにされたり、さらにイランでは熟する前の未熟なうちにブドウの一部を摘み取ってピクルスにしたり、さらにはその汁を絞り出し、調理などに使用されていることなどをお話してまいりました。

しかし、イランではなんと、ブドウの実のみならず、青々としたブドウの葉までもが調理に使用されています。日本でも、植物の葉を用いた料理として、ロールキャベツがあり、さらには桜の葉を巻いた桜餅や、柏の葉を巻いた柏餅がよく知られています。一方、イランではひき肉や野菜、米などを混ぜたものをブドウの葉で包んで煮込んだ、ロールキャベツならぬ、ロールブドウとでもいえそうなドルメという料理があります。これはもちろん、ブドウの葉ごと一緒に食べます。そこで今回は、ブドウの収穫シーズンにちなんで、この「ひき肉と野菜の混ぜ合わせのブドウの葉ロール」・ドルメをご紹介してまいりましょう。

ちなみに、ドルメという名称はもともとはトルコ語で「中が満たされた、一杯に詰められた」という意味の受動態動詞「ドルマク」という言葉から来ているそうです。ドルメの発生起源、発祥地については諸説があるものの、その語源からトルコ語圏ではないかとされています。

<材料>3~4人分

米(うるち米でOK);2カップ

スプリットピー(われ豆);1カップ

ひき肉;400g

ブドウの葉(中程度の大きさのもの、イランでは特にブドウの種類は限定されていません);20枚から30枚(中身の分量によって多少異なります。なお、中身を包む際に敗れないようにするため、茎を葉の付け根から除去しておく)

玉ねぎ;中程度の大きさのもの2個

塩、胡椒、ターメリック;それぞれ適量

ハーブ野菜;パセリ、ミント、ディール(せり科の野菜)、ネギ、タラゴン(西洋ヨモギ)、セボリー(しそ科キダチハッカ)合わせて500g(イランではこれらはドルメ用野菜として八百屋さんで普通に販売されていますが、日本で入手しにくいものは、ニラなどの別の野菜で代用していただいてもよいと思います)

煮込みソース(水;1カップ、酢;カップ半分、砂糖;食事用大スプーン1杯)

塩;少量

<作り方の手順>

1.たまねぎを細長く切ってサラダオイルで炒め、しんなりしてきたらひき肉を加えて中火でさらに炒める

2.水を沸騰させ、米とスプリットピーをそれぞれ別途に半煮えの状態になるまで煮て、ざるにあけて水を切っておく。ハーブ野菜は全部混ぜ合わせてみじん切りにする

3.1.に半煮えの米とスプリットピー、ハーブ野菜のみじん切りを加えて、よく混ぜながらさらに中火で炒め、適量の塩と胡椒、ターメリックを加える。これで種の出来上がり

4.鍋(またはフライパン)に適量の水を入れて沸騰させ、沸騰したら塩を少量加えて、洗ったブドウの葉を入れ、1分弱でさっと茹でる。しんなりして色がくすんだら、葉が破れないように水を切る

なお、鍋で煮る際に焦げ付くのを防ぐため、鍋にサラダオイルを入れ、何枚かのブドウの葉を敷いておく

5.茹でたブドウの葉で、3.で作った種を包む(以下の写真の右上、左上、右下、左下のような手順で包むとうまくいくようです)

なお、包み方は好みにより細長くしても、茶巾絞りのように丸くしてもOK。

6.包みあがったものを、底にブドウの葉をしいた鍋にきちんと並べ、積み上げる

7.水、酢、砂糖を混ぜ合わせたソースを満遍なくふりかけて蓋をかぶせ、弱火で2,30分ほど蒸らして出来上がり。なお、ソースにはお好みでトマトペーストや、ざくろのペーストを加えることもできます。

すでにお話しましたように、ひき肉と野菜のみじん切り+スプリットピーの混ぜ合わせたタネをぶどうの葉で包む場合には、お好みにより細長くしても、または球状や楕円状にしてもOKです。そしてイランでは付け合せ、装飾として、バーベリーや炒めた玉ねぎなど、色々な食材が使われています。

ところで、ブドウは果実のみならず、実は葉にも意外な栄養素や医学的効用があるということです。調理にブドウの葉を使用するのは、私たち日本人にとっていささか不思議なことかもしれません。そこで、この辺で少々ブドウの葉が持つ様々な効用についてご紹介しましょう。

食用としてのブドウの葉は、イランでは春季に成熟し、摘み取られます。ブドウの葉に含まれる成分は主にショ糖、イノシトール、ケルセチン、カロチン、タンニン、ベタイン、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、カリウム、鉄、珪素が含まれています。

また、食物繊維が豊富に含まれていることから、食物の消化を促す働きがあるほか、通風や黄疸、慢性気管支炎にも効き、抗酸化作用があることから、体内での腫瘍の増殖を阻止するということです。しかも、ブドウの茎を粉末にして酢につけたものは、虫刺されや痔の治療にも使われるそうです。さらに、風邪や感染性腸炎を治療するための高価な消毒剤としても知られているということです。

さて、今回はブドウの葉で肉や豆などを包んだドルメをご紹介してまいりましたが、実にはイランにはほかにもトマトやナス、ピーマンを使ったドルメ料理が存在します。そこで、次回は是非、ほかの材料を使ったドルメの作り方を取り上げたいと思います。どうぞ、お楽しみに。

 

 

 

 

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。