料理

イランの家庭料理;タフチーンをどうぞ

こんがりとキツネ色に出来上がった「おこげ」つきのタフチーン

このレポートではこれまで数回に渡り、イランの家庭料理や軽食のレシピとその作り方をご紹介してまいりました。しかし、イラン料理は種類が多く、また同じメニューでもアドリブを加えることでまた違った趣向のものが出来上がります。さらに、それほど複雑な作業の必要のないメニューも少なくありません。しかも、和食とは大きく発想の違う調理法や組み合わせが多くなっています。そこで今回は、イランで人気のあるそうしたメニューの1つである「タフチーン」(鶏肉と卵・サフラン・ヨーグルトの炊き込みご飯ケーキ)をご紹介してまいりましょう。

なお、タフチーンというのは、ペルシャ語でタフ(底)+チーン(「並べる」を意味する動詞の語根)という合成語で、材料を鍋や容器の底に敷き詰めることに由来しているものと思われます。

材料(6人~8人分)
・インディカ米、またはタイ米 ・・・1kg
・鶏肉  ・・・胸肉2枚もしくは骨付きのもも肉2本
・ヨーグルト  ・・・500g
・湯で溶いたサフラン・・・小さじ1杯
・卵 ・・・3個
・油、塩、胡椒 ・・・各少々

 

<作り方>
1.鍋に水と鶏肉を入れ、水分がコップ1杯ほどになるまで煮る。煮えたら、鶏肉を取り出しておく

2.湯で溶かしたサフラン、塩こしょう少々、卵黄3個分をヨーグルトと混ぜ合わせ、1.で煮えた鶏肉を入れて、しばらく置く。できれば、数時間つけておくとよい

3.鍋に水と米を入れて火にかけ、少し芯が残った状態でザルにあける

4.油大さじ3杯、鶏肉を浸けておいたヨーグルト液をお玉に1、2杯、そして3.できた米をお玉3杯分と混ぜ合わせる

5.4で混ぜ合わせた材料をテフロン加工の鍋に注ぎ、スプーンで表面を滑らかにする

6.鶏肉を5.の上にのせ、次に半煮えの米を載せる。この作業を数回繰り返して鶏肉と米が何層にもなるようにする

鶏肉とサフランご飯によりできた層の断面

7.鶏肉の汁と油大さじ4杯を、容器に残ったヨーグルト液と混ぜて表面に注ぎ、鍋の蓋を布でくるんで被せ、弱火で1時間ほど蒸らして出来上がり。(火にかける時間が長くなるほど、分厚いおこげが出来るので、好みに合わせて調節して下さい)

8.鍋を裏返してケーキ状にして皿に盛り付ける

 

なお、5.の段階で鍋でなく耐熱容器などに入れてオーブン・レンジなどで焼く方法もあります。その場合は160℃ほどで1時間ぐらいを目安にするとよいと思います。

耐熱容器に敷き詰めた例
丸いケーキ状のタフチーン。お好みでバーベリーやピスタチオの細切りなどを乗せても

なお、タフチーンという料理が生まれた背景については、テヘラン市内で人気の高いあるレストランの関係者の話によりますと、宮廷専属の料理人がイラン料理の定番メニューである「チェロウモルグ」(イラン式鶏肉煮込みと米飯)を作ろうとした際の失敗から生まれたとされています。いつの時代だったかは定かではありませんが、宮廷で王族向けに料理をつくる料理人がいつものように鶏肉煮込みと米飯を作ろうとしたところ、本来ならば出来上がったときに米の粒どうしがくっつかないパサパサの状態に作るべきところを、水加減を間違えて、日本式のご飯のように粘り気のあるライスが出来上がってしまいます。このままでは処罰されることを恐れたこの料理人は咄嗟に機転をきかせ、粘り気のある米飯にサフランとヨーグルトを混ぜたものを、煮込んだ鶏肉と交互に鍋に敷き詰めて蒸らし、これを鍋の底に敷き詰めた新メニュー・タフチーンとして自分が考案したと発表したことから、このメニューが生まれたと言われているそうです。

現在では、この料理はイラン人の間でもボリュームの高いメニューとして非常に人気があり、家庭用パーティーなどで出てくることも珍しくありません。

また、冒頭でもご紹介しましたように、このメニューも趣向や好み次第で様々なバリエーションを加えることができます。

おこげの部分に魚の切り身を使用した例
おこげにビートを使用した例
米飯の間に鶏肉に加えてナスを挟んだ例

さて、今回ご紹介しましたタフチーンは如何だったでしょうか。日本の通常の外食産業ではあまり出てこないメニューで、西アジアの雰囲気を少しでも味わっていただければと思います。

来月もどうぞ、お楽しみに。