出来立てのオクラ煮込みにミニトマトを添えて
サフランで黄色く染めたライスとの組み合わせは天下一品
これまでにもたびたびお伝えしてまいりましたように、広大な国土と気候風土の多様性を誇るイランでは、各地で四季折々の旬の作物が八百屋さんのお店先に並びます。確かに、洗って皮をむき、または適当な細かさに刻まれていたりなど、袋を開けてすぐに使える既製品の調理用野菜も沢山販売されていますが、やはり家庭の主婦が旬の野菜を使って作る手料理は何物にも代えがたいものです。また、既製品よりも自分で手間暇かけて保存用の野菜を作る家庭の主婦は決して少なくありません。
筆者自身も、イランでは調理の際にすぐに使える常備野菜を大量に作り、冷凍庫に保存しています。特にオクラやソラマメなど特定のシーズンにのみ出回る作物をはじめ、ドジョウインゲンや煮込み用の野菜は、芯を抜き皮を剥いたり廃棄部分を切除して洗い、刻んだものをサラダオイルでサッと炒め、薄手のビニール袋に入れてフリーザーに保管しておくと大変便利です。
さて、先月はソラマメのシーズンに因んで、ソラマメを使った炊き込みご飯のレシピをご紹介いたしました。これに続いて現在イランでは、新鮮なオクラのシーズンが到来しています。北東アフリカを原産とするオクラは、イランではラムなどと一緒にトマトペーストで煮込み、サフランで黄色く染めた米飯とともに食されることが多くなっています。
サラダやフレンチフライポテト、ハーブ野菜などを添えて
逆さに身を付けるオクラ
オクラの花
イラン南東部地域でのオクラの収穫の様子
日本でも、オクラ入りのシチューはレシピとして紹介されていますし、調べてみますとこの種のメニューはアラブ圏やそのほかの国々にも存在していますが、イランにもオクラを使った独自の風味のメニューが存在しています。そこで今回は、オクラのシーズンにちなんで「オクラ・牛肉のトマトペースト煮込み」とライスというイランで人気のある家庭料理の1つをご紹介してまいりましょう。
<用意するもの>
・小さめのオクラ 400g
・ラムまたは牛肉 300g
・割れ豆(スプリットピー、あらかじめ水に30分以上浸けておく) カレー用スプーン8杯分
・玉ねぎ(中程度の大きさ) 2個
・ニンニク 3片
・トマトペースト カレー用スプーン1杯
・トマトピューレ カレー用スプーン16杯分
・レモン汁 カレー用スプーン2杯分
・コショウ、ターメリック それぞれ紅茶用スプーン1杯
・塩、サラダオイル それぞれ適量
・インディカ米 3合
・じゃがいも(お焦げ用、中程度の大きさ) 2個
<作り方>
1.湯とり法で米飯を炊く。インディカ米を洗い、最低30分水に浸けておく。大きめの鍋に水を沸騰させ、米が半煮えになったところでざるに空けて水を切る。鍋の底にサラダオイルを敷き、皮をむいて7㎜前後の輪切りにしたジャガイモを敷き詰め、その上に半煮えの米を入れ、鍋の蓋を布巾などで包んだものを被せ、30分くらい蒸らす。
2.玉ねぎを粗みじん切りにし、別の鍋にサラダオイルを入れて底全体に行きわたらせ、粗みじん切りにした玉ねぎを透き通るまで炒める。玉ねぎの色が透きとおってきたら、みじん切りにしたニンニクを加えてさらに炒める。玉ねぎがキツネ色になりニンニクの匂いが出てきたらコショウとターメリックを加え、全体に馴染ませる3.コショウとターメリックの香りが出てきたら、一口大に切った牛肉または、ラムを加えて炒める。肉の表面の色が完全に変わったら、肉が完全に隠れるくらいの量の熱湯を加えて沸騰させる。沸騰したら、鍋の蓋を被せて弱火でじっくり煮込む
4.フライパンで、適量のサラダオイルとともにトマトペースを温め、ボコボコと沸騰してきたところで、トマトピューレを加えてさらに全体に馴染ませて炒める。3.で煮込み中の肉が半煮えになったところで、油で温めたトマトペーストとトマトピューレの混ぜ合わせを加え、鍋の蓋を再度閉じて肉が完全に中に火が通るまで引き続き煮込む。ちなみに、実際のイラン人家庭では1~2時間ほどかけてじっくりと肉を煮込むことも珍しくないようです。
5.水に浸けておいたスプリットピーの水を切り、フライパンで少量の油とともに炒めて生臭みを消す。生臭みがなくなった時点で4.に加え、さらに煮込む
6.オクラを洗ってよく水を切り、フライパンで適量のサラダオイルとともに表面に少々焦げ目がつくくらにまで炒める。なお、オクラのヘタはお好みで除去してもしなくてもOK
7.この間に肉の煮え具合を見て、肉が十分に煮えたところで炒めたオクラを加え、オクラ全体にトマトの風味を馴染ませる。但し、オクラは煮すぎると形が崩れるため、煮過ぎないように注意する
8.適量の塩とレモン汁を加える。レモン汁の風味が全体に馴染んだら、米飯とは別に適切な器に盛り付ける
なお、仕上げにお好みで紅茶用スプーン半分ほどのパプリカやガーリック、さらにはすりおろした生姜などを加えて風味を整えることもできます。さらに、全体の彩をよくし香ばしい風味を加えるために、少量のサフランを加えることもできるそうです。
それから、このメニュー全体がオクラの粘り気によりねばねばしないよう、できる限り小さめのオクラを選び、さらにはオクラを扱う際になるべく傷をつけないようにしていただくことにも留意していただければと思います。
それから、応用編といたしまして、このメニューは牛肉やラムの代わりに鶏肉を入れることもできますので、こちらもお試しください。
さらに、著者の在住するイラン・ガズヴィーン市内の複数の飲食店関係者によりますと、このメニューをはじめ、煮込み系の料理は銅製の鍋を使用すると、よりおいしいものができるそうです。
ちなみに、オクラにはビタミンA,K,C,葉酸、食物繊維などが豊富に含まれていることから便秘や喘息の改善、減量、骨の強化、黄斑変性症や白内障の予防、肝臓の浄化、記憶力保持、制癌作用などが期待できると言われています。
以上、今回はオクラを使ったイランの家庭料理をご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。日本の皆様にもぜひ、国内で入手できる食材を使って、西アジアの風味を身近に感じていただければと思います。
次回もどうぞ、お楽しみに。