イラン北東部に多いトルクメン族の郷土料理・チャクデルメ;サラダやハーブ、オリーブなどの付けあわせを添えて
ピクルスやヨーグルトなどを添えても
皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年も昨年に引き続き、コロナ禍の中での年明けとなりました。依然として旅行や特に県境、国境を越えての移動やイベント、人の面会や会食などの自粛が求められる中、いずれは訪れるポストコロナ時代に向けて、皆様日々精進されていることと存じます。本年こそは完全とまではいかないまでも、コロナ危機一応の収束に至ることを願いながら、新春初のレポートをお届けしてまいりましょう。
今回は、イラン北東部に多く住んでいる少数民族トルクメン族の郷土料理のひとつ「チャクデルメ」をご紹介してまいります。
チャクデルメは、パーティーや冠婚葬祭などによく出される料理で、トルクメン民族だけでなく、イラン北東部ゴレスターン州を訪れる旅行者や観光客の間でも好評を博しています。しかもこのメニューは、たんぱく質を多く含み栄養満点というメリットもありますが、特別な材料は必要なく、肉もしくは魚、たまねぎ、米、トマト、トマトペースト、ごま油といったごく普通の食材を使って、皆様にもご自宅でお手軽に作っていただけます。
にんじんを加えたチャクデルメの調理例
この郷土料理は、羊肉から魚とにんじんまで様々なバリエーションがありますが、今回は羊肉もしくは牛肉を使った一般的なレシピをご紹介してまいりましょう。
材料(3人分):
- 米 3カップ
- 羊肉または牛肉(一口大にカット) 350g
- トマトの摩り下ろし 250g
- たまねぎ(一口大に切ったもの) 中1個
- トマトペースト カレー用大スプーン2杯
- 塩こしょう、サラダオイル 適量
- 炊き込みご飯用香辛料 お好みで
<作り方の手順>
1.米を洗って常温の水に塩を加えて浸しておく。
2.中程度の大きさの鍋に少量の油を敷き、弱火で熱して温まったら、中に玉ねぎを入れてやわらかくなるまで炒め、さらにターメリックを加え、香りが出るまで炒める。その後、適切な大きさに切った肉を加えて炒め合わせる。
3.塩、こしょう、炊き込みご飯用香辛料を加え、肉とよくなじせた後、トマトの摩り下ろしを加える。
4.トマトの水分がなくなったら、トマトペーストを加え、生のトマトの匂いが飛ぶまで炒め続け、その後、2.5杯分の水を加えて、弱火でゆっくり煮込む。
5.肉がやわらかくなるまで大体2時間ほど煮込んだ後、水を切った米を加え、必要な水分を足した後、弱火で約30分蒸らしてできあがり。
なお、トルクメン族による伝統的な調理法では、いわゆる都市ガスではなく、焚き火や炭火などを使用して最終段階の「蒸らし」がなされるようです。また、一般的にイラン料理での米飯の調理には、写真のように鍋の蓋に独特のカバーをつけ、あるいは布などで覆ってかぶせ、蒸らす場合がほとんどです。
この料理は、特にトルクメン族の間では、付け合せとしてラクダの乳で作られた乳酸飲料・ドゥーグ、もしくは現地で作られたヨーグルト、トマトとキュウリのサラダ、生にんにく或いはにんにくのピクルスなどを添えて出されることが多くなっています。
そしてもちろん、このメニューに付随してできるおこげも食べ逃しなく。
ちなみに、この料理を考案したトルクメン族の人々は、イラン北東部のトルクメニスタンとの国境地帯、すなわちトルクメンサフラーと呼ばれる地域に多く住んでおり、日本人などの東洋人に容貌が類似しています。また、彼ら独自の言語や風俗習慣を持ち、今でも床に座って食事を取る人々がほとんどだということです。
床に座って食事をするトルクメン族の人々
独自の風俗習慣を持つトルクメン族
イランは国土が広く、多様な気候風土に恵まれていることに加えて、多種多様な民族が存在します。いわゆる標準的とされるイラン料理に加えて、その地域独自の民族の伝統料理や、地元で取れる食材を使った、多岐にわたるメニューに出会うことができます。このような点は、関東と関西で風味が違ったり、九州・沖縄起源のメニュー、また石狩鍋や佃煮など、地名が名称となっている料理が存在する日本にも類似しているのではないでしょうか。
東西アジアの両極端に位置する日本とイランで、こうした共通点が見られることは大変興味深い点ではないかと思われます。ほかにも、イラン独自の書道芸術が存在し、また室内に入るときには靴を脱ぐ等、両国には意外な共通点が見られます。さらに、ゲイシャ、サムライ、カラテ、ジュードー、ニンジャ、オリガミ、カミカゼといった日本語はもはや借用語としてペルシャ語にも流入し、意味内容とともにすっかり定着し、イランは世界有数の親日国でもあります。本年も、そうしたイランの魅力を様々な角度から直接皆様にお伝えしてまいりたいと思います。どうぞ、お楽しみに。