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イランの新学期

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イランの新学年の始まりは、欧米諸国などと同じように9月となっています。しかし、イランでは独自の太陽暦を使用しているため、この太陽暦の7月1日、即ち日本で言う秋分の日に当たる9月23日に、小学校、中学校、高等学校、大学などの教育機関が新学年をスタートさせることになります。今回は、この新学年のスタートの時期に因み、この時期のイランの様子についてお伝えすることにいたしましょう。

正確に述べますと、イランでは日本のように法律で小・中学校が厳密に義務教育とされているわけではありませんが、イランも教育熱は非常に高く、近年では就学率が非常に高くなっています。
イランに設置されている学校の多くは、日本でいう公立学校に当たる国立校ですが、最近では教育内容や教師の質が優れている、設備がより良い、優秀な生徒が集まるエリート校であるなどといった、いわゆる人気のある私立学校も増えてきているようです。また、イランはこれまで長い間、小学校が5年、中学校が3年、高等学校が3年、そして大学進学を希望する人のための準備課程は1年となっていましたが、2年ほど前から日本と同じ6・3・3・4制に切り替わっています。

さて、イランでは日本と違い、特に就学年齢に達した子どものいる家庭に、市役所から通知が送られてくるということはなく、9月の時点で満6歳に達している子どものいる親が、それぞれ最寄の学校、或いは入学を希望する学校に直接出向いて、イラン政府発行の出生証明書(満6歳になっていることの証明とするため)、学校から渡される入学願書、健康状態に関する質問書、予防接種の証明書などを持って入学申し込みをすることになります。小学校のそれ以外の学年、中学校、高校も入学登録方法はほぼ同じですが、これに前年度の学年、もしくは小学校、中学校全課程の成績表をともに提出することになります。
普通、入学受付が始まるのは、8月から9月の初めごろの学校が多くなっていますが、人気の高い学校は早く定員枠が埋まってしまうため、もう少し早くから入学申し込みを受けつけています。
イランの学校は小学校1年から絶対評価であり、定期試験があって学年末試験に合格しないと上の学年には上がれない仕組みになっています。20点満点で10点以上が合格点であり、合格すれば次の学年に進めます。このため、イランでは高校入試は普通はありません。しかし、いわゆる成績のよい生徒が集まるエリート校も当然ながら存在しており、そのような学校では小学校でも入学試験があります。

日本の場合ですと、中学校までは義務教育のため、教科書が無料で配布されますが、イランではそのような仕組みではなため、小学校から教科書代が別途にかかります。年間授業料も支払う必要がありますが、公立校では非常に安くなっており、逆に私立学校については、学校によってまちまちですが、最近ではかなり高くなってきているようです。
日本では複数の教科書会社があって、文部科学省の認定を受けた教科書を各学校が選択するため、途中で転校した場合などに教科書が違う、ということがありますが、イランでは全国一律の国定教科書を使用しており、毎年新しい国定教科書が発行されます。小学校の場合は、学校に教科書代を払い、学校で受け取ることが多いですが、中学生以上の場合は普通、夏休みの早いうちに、教科書を扱っている最寄の文房具屋さんに予約を入れておき、新学期の始まる直前に代金を支払って受領するケースがほとんどです。

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というわけで、この時期になると、街中の文房具屋さんはにわかに忙しくなり、書き入れ時となります。中には、店舗の入り口やショーウインドウに『教科書を扱っています』という大きな張り紙を出しているお店もあります。先日も、街中のある文房具屋さんをのぞいてみると、さっそくお母さんに連れられて教科書を買いにやって来た子どもたちの姿を見かけました。新しい教科書の他にも、筆箱や鉛筆、ノートなどもあわせて買い求める子どもたちは、非常に嬉しそうな表情です。店内には、予約済みで既に学年ごとに束ねた全教科の教科書の山がずらりと並び、足の踏み場もないほどスペースを占拠していることもあります。カラフルな文房具は子どもたちの目を引くようで、子どもが親に「あれ買って、これも欲しい」などとねだっている光景は、日本とそれほど変わりません。

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さらに、新しい通学かばんを買ってもらうことも、子どもたちにとっての楽しみの1つでしょう。この頃になると、やはり街中のお店に漫画のキャラクターをあしらったりしたカラフルな背負いかばんが売りに出され、親子連れが買いに来ている光景が見られます。子どもにかばんを背負わせてみて、重過ぎないかどうか、サイズが合うかなどど吟味している風景も本当にほほえましいものです。
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イランでは日本で言う学生かばんやランドセルのようなものはありませんが、それぞれが自分の好みで背負いかばんや手提げかばんを選んでいます。日本の学校と違い、教科書と制服以外には、あまり厳密な指定はないようです。

それからこの時期において注目すべきことは、経済的に恵まれていない家庭の子どもたちが、学用品を揃え、学校に行けるようにとの配慮から、恵まれない子どもたちのための募金活動が行われることです。自分だけでなく、ほかの子どもたちもという考え方は、イランで国教とされているイスラムの友愛の精神に基づくものといえるでしょう。

イランの学校は小学校から高校まで男女別学であり、女子高は全て制服があります。女子学生は、うす手のスプリングコートのようなものに、布製の頭巾を被り、さながら教会のシスターのような服装で通学します。男子校については、小学校までは上っ張りのようなコート式の制服のある学校がほとんどですが、中学校からは公立校の場合は制服がない学校が多いようです。

もうすぐ、真新しい制服に身を包み、新しいかばんに新しい教科書を入れて子どもたちが学校に通う姿が見られる時期がやってきます。

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