行事

イスラム教シーア派3代目イマーム・ホサインの追悼行事

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イランをはじめとするイスラム諸国は、もうすぐイスラム暦の新年を迎えます。このイスラム暦の最初の月はモハッラム月と呼ばれ、特にシーア派イスラム教徒にとっては、現在のイラクの町カルバラーで暴君と戦い、非業の殉教を遂げた英雄イマーム・ホサインを追悼する月となっています。今回は、この追悼行事に因んだ話題をお届けしましょう。

そもそも、この追悼行事の由来は、今からおよそ1400年ほど前にイラクのカルバラーの町で起こった、シーア派イスラム教の英雄で、預言者ムハンマドの後継者アリーの次男ホセインが、当時の暴君ヤズィードを相手に反旗を翻し、圧倒的に不利な状況ながら果敢に戦い、最後は教友たちとともに果てたという出来事です。

この出来事は、今から1400年も前の、しかも日本から遠く離れたアラブの国で発生したものであり、一般の日本人には一見縁遠い出来事のように思われるかもしれません。しかし、圧制者や暴君、不当な扱いに対して敢然と立ち上がり、対抗するという行為は、時代や国境を越えて常に見られるものであり、また勇気ある果敢な行動として称賛されるに相応しいものではないでしょうか。最近でも、中東や北アフリカの複数の国では、アラブの春と称する民主化運動が連鎖的に発生し、また経済大国とされるアメリカでも、社会的な不平等や資本主義体制の矛盾に抗議するウォール街デモが発生したことは、皆様の記憶に新しいのではないかと思われます。
もうすぐ行われる、イマームホセインの追悼行事はアーシュラーと呼ばれ、特にイランでは全国を挙げて盛大に行われます。この日は、当然学校や官公庁も全て休みとなり、イラン全土が黒色に包まれます。

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この行事が行われるのは、イスラム暦モハッラム月の9日と10日ですが、その2週間ほど前から、少しずつ準備が始められます。現在、シーア派最大の追悼行事を目前に控え、イランではその準備が進められています。街中は黒や緑を基調とする装飾がなされ、あちらこちらに横断幕や屋台などが見られます。今年のこの行事は、今月の13日と14日にあたり、この日には主に男性が鎖の束を体に打ちつけ、大太鼓を慣らしながら町中を練り歩く行列の行進が見られます。中には、緑色の衣装を身にまとってイマームホサインに扮した人や、赤い衣装により暴君ヤズィードに扮した人もおり、これらの人々によるタアズィーエと呼ばれる殉難劇も行われます。

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この日の主役となる追悼の行列を形成するのは、主に男性ですが、女性たちも決して影を潜めてはいません。アーシュと呼ばれる、豆類と小麦粉の麺、野菜を煮込んだこの日専用のスープや、ショオレザルドと呼ばれる、砂糖と米とサフランを煮込んだ食べ物を作り、配布する場では、沢山の女性が作業に当たっています。

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大きな鍋がいくつも並び、こうした料理が作られるのも、アーシュラーの風物詩といえるでしょう。又、この日には、何か願い事のある人が、任意でこうしたご馳走を作り、人々に無償で配布したり、さらにはお菓子を自分で購入して道行く人々に配布する光景も見られます。なお、こうしたご馳走やお菓子は、出した方も、受け取ったご利益があるとされ、こうした行動自体が、一種の宗教行為と見なされています。

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兎に角、イラン人にとってアーシュラーの行事で追悼するイマーム・ホサインは偉大な英雄であり、あの事件から1400年以上たった今も、イラン人の心に深く刻まれています。この行事を間近に見学すると、自分たちの信条や尊敬する英雄への、時代を越えての思い入れが見て取れます。そうした彼らの信念や信条は、今後も世代から世代へと受け継がれていくことでしょう。

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