イラン情報

エッ!これがイラン!?イランの意外な一面を一挙に公開(1)

 

早いもので、2023年もあとわずかとなりました。世界はやっとコロナ禍から脱出して人の往来や物流もほぼコロナ前に戻ってきています。しかし、その一方で気候変動による異常気象がメディアを賑わせ、さらにはウクライナ情勢に加えて昨今では中東情勢がにわかに緊迫化するなど、国際情勢から益々目が離せなくなってきたような感がいたします。

そうした中東地域にあるイランも昨今はより頻繁にメディアで報じられ、皆様もきっと注目しておられるかと思います。もしかすると皆様の中には、中東地域はどこの国も一緒で、イラン国内も相当に騒然としているのではないか、また厳格なイスラム教の国とご想像される方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、筆者自身は日本人としてイランに実際に20年以上住んでみて、学校教育や日本のメディアなどに出てこない様々なイランの現実を目の当たりにし、非常に驚かされたともに、イランやイスラムに対する考え方も随分変わったように思います。

これまでにこのレポートでは、筆者が実際にイランで目の当たりにした、そして日本のメディアに通常はまず出てこないと思われるイランの意外な見どころのほか、その時々のホットな情報や出来事、またコロナ禍で気軽な外出が難しいと思われる時期には、ご自宅で手軽に作れそうなイラン料理のレシピをご紹介してまいりました。

そこで、年末年始という節目でもあることから今回と次回の2回にわたって、一般の日本人の皆様の間から「エッ!これがイランなの!?」という声が上がりそうなイランの一面の数々を、写真とともにご紹介してまいりたいと思います。

さて、まず第1にイランが正確に世界のどの辺にあるかご存じでしょうか?

ずばり、地図で見るとイランと日本はほぼ同緯度にあります。日本からは約7500km離れていますが、イランの首都テヘランは東京とほぼ同緯度に位置しており、決して赤道直下などではありません。このことは世界地図をご覧になればご理解いただけるかと思います。

日本人の皆様にとって一般的な外国と言えば、ニュースによく出てくる中国、韓国、台湾、東南アジア、欧米諸国といったところでしょうか。しかし、昨今ではウクライナ戦争に加えて、中東情勢がにわかに緊迫化してきたことからウクライナとロシア、そしてイスラエルにパレスチナもよく耳にされるかと思います。日本が極東アジアに位置するのに対し、イランはその正反対の西アジアということになります。

では、世界の中のイランの位置を確認していただいたどころで、今度はイランにスポットを当ててみましょう。以下の地図でもお分かりの通り、イランは座っている猫もしくは、カタツムリのような形に似ています。

ちなみに、イランの総面積は日本の約4倍半で、日本の都道府県に相当する行政区分では31の州に分かれています。北はカスピ海、南はペルシャ湾に面しており、7つの国との陸の国境を共有しています。またテヘランは比較的北の方角にあり、カスピ海には最短で車で3~4時間ほどでアクセスできます。

さて、イランと言えば、まず皆さまにとってイメージされるものの1つは「砂漠の国」ではないでしょうか。もちろん、以前にこのレポートでご紹介したような世界最高の体感温度を記録したルート砂漠はイラン南東部にありますが、イランの気候風土はそれだけではありません。まずは、以下の地図をご覧ください。

上の地図で見ていただくと、意外にもイランには山岳地帯や山地が多いことがお判りいただけるかと思います。このことから、イランは火山国であると同時に日本と同様に温泉も多く、また地震も多発しています。最近では、2017年1月25日に西部ケルマーンシャー州を中心に、阪神淡路大震災に相当する大きさのM7.3の地震が発生し、大きな被害が出ました。

では以下に、多様性に富んだイランの自然をご覧ください。

一瞬、「これは富士山かな?」と思われたかもしれません。これは、「イラン富士」の別名もあるダマーヴァンド山です。標高は5610mで、イランの最高峰であるとともに、アジアで最も高い火山でもあります。ちなみに現在は休火山とされ、カスピ海の南岸から約70㎞南、そしてテヘランの北東66kmに位置しています。

カスピ海北部の田園風景。緑豊かで日本家屋のような木造の切妻屋根の民家が見られます。

カスピ海の「海の家」。カスピ海の総面積は日本の総面積とほぼ同じで、向こうが見えないほど大きいです(当然ですよね!)。

また、イランには長閑できれいな川も流れています。思わず、中に入って遊びたくなってしまうのではないでしょうか。ちなみにこれは、イラン北西部のイランとアゼルバイジャンの国境を流れるアラス川です。向かって右側がアゼルバイジャン、左側がイランです。

イランにも日本と同様に四季の変化があります。春と秋は日本より短いですが、特に春には花のイベントが開かれる地域もあります。

テヘランから西に40キロ離れた町キャラジでのチューリップフェスティバルの様子。

そして、イラン中部には、「イランのオランダ」とも評されるほど花の栽培の盛んな地域があります。中部マハッラートでのチューリップフェスタの様子。

また、一般的に「熱い砂漠の国」というイメージとは逆に、イランには相当の雪も降ります。テヘランのほか、特に内陸部から中部、西部、北西部でよく大雪、大量の積雪のニュースが聞かれます。

テヘラン西部のある地方都市で、スリップした車を押す様子

イランでも雪だるま作りが見られます。

テヘランから西に300キロ離れた町での大雪

もう10年ほど前に、テヘランで記録的な大雪が降ったことがありますが、その時は確か、11月初めに30センチほど積り、札幌より初雪が早かったとして話題になりました。テヘランにあるスキー場も、例年以上の相当数のスキー客が訪れました。テヘラン市北部のスキー場。大勢のスキー客で賑わっています。

 

さて、テヘランをはじめとするほぼ北半分の地域が寒さに見舞われている間にも、ペルシャ湾に面した南の地域では海水浴やボート遊びが楽しめます。11月上旬のペルシャ湾で遊ぶ子どもたち

ペルシャ湾の砂浜の貝殻

朝日が昇るペルシャ湾岸。エメラルドグリーンに輝く海はまさに、イランの「美ら海」ではないでしょうか。

そして勿論、イランの自然を語る上で砂漠の存在は欠かせません。特に南東部に広がる「ルート砂漠」が有名です。単なる砂砂漠ではなく、奇妙な形をした天然の砂柱が沢山見られるのが特徴です。

それではここからは、イランが誇る芸術や文化について触れてまいりましょう。

ペルシャ絨毯は、もう皆様もご存じかと思います。ペルシャ絨毯は、紀元前の王朝時代からの歴史を誇っています。いわば床の上の芸術品というにふさわしいものですが、同時に生活用品として人々の日々の暮らしに深くなじんでいます。さらに、大多数のイラン国民がイスラム教徒であり、1日5回の礼拝も絨毯の上で立ったり座ったりして行うことから、絨毯はイラン人の生活に急速に広まりました。また、日本ですと、「畳は新しい方がよい」と言われますが、ペルシャ絨毯は逆に、使えば使うほど魅力が上がると言われています。

現在はイランでも機械織りの絨毯が安価で沢山販売されていますが、本物のペルシャ絨毯は絨毯職人さんが一目ずつ丹念に織り込んだ手編みのものを指します。絨毯の素材はウールもしくはシルクが主流です。大きさは色々なものがあり、また生産される地域や町ごとに独自のデザインがあります。

また、イランには絨毯以外にも300種類以上の手工芸があると言われています。中でも中部イスファハーンは手工芸の町として知られています。

また、イランが誇る芸術としてペルシャ書道があります。ペルシャ書道は、日本や中国などの毛筆ではなく、葦の茎を削ったペンを使います。

日本や中国の書道は縦書きもしくは、左から右に書きますが、ペルシャ書道は右から左に書きます。ちなみに、パソコンを打つ時も右から左にカーソルが動いていきます。

そして、イランが誇るもう1つの芸術として、ミニアチュール(細密画)が挙げられます。

こうした細密画が描かれるようになったのは、今から1000年以上前だとされています。イラン式のミニアチュールは主に、書籍の装飾などに使われ、物語や文学作品の内容をモチーフにしたものが多くなっています。

さて、今度はイランが誇る食文化、おいしい食べ物をご紹介してまいりましょう。

イランは先にご紹介したようにカスピ海に面していることから、品質の良いキャビアの生産国となっています。

日本でキャビアと言えば、ロシアなど他国のものが有名ですが、イラン産のキャビアは粒が大きく、高品質で風味も抜群、栄養価も高いとされています。キャビアは日本でいうイクラに相当すると思われ、カスピ海の珍味といえるのではないでしょうか。

また、キャビアだけでなく、チョウザメの魚肉も焼き魚として食されています。イランを代表する動物はラクダだけでなく、チョウザメも是非加えて欲しいものです。

もう1つ、イランでのお土産として知られているのがピスタチオです。日本では米カリフォルニア産のものなどが有名ですが、イラン産のピスタチオは粒が大きく、また種類も豊富です。ビールのおつまみにいかがでしょうか。

イランのおいしい食べ物の話題が出てきたところで、代表的なイラン料理チェロキャバーブをご紹介しましょう。チェロというのはインディカ米を湯取り法で炊き上げ、少々サフランで染めたライスのことで、キャバーブは羊肉や牛肉を金属製の串に刺して直火炙った焼肉のことです。

そして面白いことに、イランではおこげもご馳走の一つとされています。

イランでは、米飯を炊く時に鍋の底にサラダ油をしき、そこにさらに薄手のパンやジャガイモなどをしいてから、米を入れてむらすという手順を取るため、香ばしいおこげが出来上がります。

それでは、今回の最後として、世界的に名声を博しているイランの偉人たちをご紹介しましょう。以下の写真は、オーストリア・ウィーンにある国連事務局にある4人の偉大な学者の彫像です。これらはガリレオ・ガリレイやニュートンではなく、しかも彼らよりもはるか昔に生きていたイランの偉大な学者たちです。この4人はイランの哲学者、医学者のイブン・スィーナー、10世紀から11世紀の天文学者、数学者、そして歴史家でもあるアブーレイハーン・ビールーニー、セルジューク朝時代に生きた大詩人・数学者・天文学者ハイヤーム・ネイシャーブーリー、そして、アルコールを発見した化学者ザカリヤー・ラーズィーです。これらの4人の学者はいずれもイラン人で、この4人がそれぞれ違う方向を向いていることは、自らの修めた学問を世界の四方八方に広めることを意味しています。

アルコールを発見したザカリヤー・ラーズィーの像。化学実験に使うと思われるガラスの容器を手にしています。

四行詩ルバイヤートで知られる詩人オマル・ハイヤーム。彼は詩人としてのみならず、数学者・天文学者としても偉大な業績を挙げており、特に数学の分野では3次方程式の解法を発見しており、さらには現在の西暦の元になったグレゴリオ暦よりもさらに正確なジャラーリー暦を作成しました。

天文学者アブーレイハーン・ビールーニーの像。地球の半径を計測したと言われています。

医学分野の名著「医学典範」を著した医学者イブン・スィーナー。『医学典範』はヨーロッパでは17世紀まで、インドでは20世紀までの長きに渡り、大学のテキストとして使用され、当時の医学に大きな影響を与えました。また「錬金術」の研究に取り組む中で、水蒸気蒸留によって植物からエッセンシャルオイル(精油)を取り出す方法を確立したとされています。

さて、ここまでイランの地理や食文化、芸術、自然や手工芸などをご紹介してまいりましたが、イランの魅力はまだまだ数多くあります。そこでこの続きは、新春のレポートでお伝えしていまいります。

今年も本レポートをお読みいただき、本当に有難うございました。来たる2024年が読者の皆様にとりまして素晴らしいものとなりますよう祈願いたしまして、ひとまず今年のレポートを締めくくりたいと思います。

それでは、新春のレポートでまたお会いしましょう。