果実に負けず劣らず赤い花ザクロ
手作業で丹念に1つ1つ花を収穫
以前のこのレポートにおきまして、ちょうどザクロの収穫シーズンだったことから、イランでのザクロの収穫の様子についてご紹介させていただきました。
ザクロといえば、普通は赤く大きくて丸い果実を割り、中の粒粒を食べる、ジュースやペーストにするといった、食べるほうのイメージが強いのではないかと思われます。
ところがこのほど、ザクロには実は先だってご紹介しましたナツメヤシと同様に雄株(花ザクロ)と雌株(実ザクロ)があり、イランではその雄株にあたる花ザクロの収穫が行われていることを、ある伝で知るにいたりました。恥ずかしながら、ザクロは果実を食べるだけでなく、花も別途に利用されていることを最近知った次第です。
そこで今回は、ちょうど最近イラン南部を中心に実施されていました、花ザクロの収穫についてお届けしてまいりたいと思います。
ザクロはイラン原産といわれ、ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木で、イランでは有史以前から利用されていたといわれています。西へはシリアからエジプトに伝わり、さらにギリシャに伝わって昔は「カルタゴのリンゴ」の異名をとったとも言われています。日本には平安時代に、中国を経て渡来したとされています。
ちなみに、花ザクロはペルシャ語ではゴルナール(Golnaar、gol・花+anaar・ザクロ、ペルシャ語表記ではگلنار)と呼ばれ、石鹸の商品名にもなっています。
イランで「ゴルナール」の商標で販売されている石鹸
この樹木は、どちらかといえば果実が注目されているようです。しかし、ザクロの花も観賞用として珍重され、またイランでは化粧品や薬草として使用されるほか、そばかす、重度の皮膚の炎症とかゆみ、ワキガの緩和、にきびや下痢、口腔カンジダ症の治療、血糖値の調節、歯茎と歯の強化にも使われているとのことです。
ただし、妊娠中や授乳中の女性に対しては、ザクロの花の摂取は控えるよう推奨されているそうです。
今回は、イラン国内有数の花ザクロの産地の1つとされる、南部ファールス州アルセンジャーン郡での収穫・摘み取りの様子をお届けしましょう。
芳香につられてやって来た蜂
青空に映える満開の花ザクロ
花の重さは結構あるのでしょうか。花の集中した枝が垂れ下がっています
真っ赤なザクロの花は相当目立つのでしょうか、野鳥もひきつけられるようです
強い日差しの中、作業員が1つずつ丹念に手作業で樹木から花を摘み取ります
ますは摘み取った花を手元のバケツに集めます
バケツに摘み取ったザクロの花を1箇所にあけます、まるで花の滝のようです。
アルセンジャーン郡内のある花ザクロ栽培の関係者の話によりますと、平均して1ヘクタール当たり1300kgもの花ザクロが収穫できるそうです。また、郡内全域にある花ザクロ園では、合計およそ40トン以上が収穫されるということです。
収穫された大量の花ザクロ。赤いじゅうたんのように並べて天日干しにします。
天日干しの花ザクロに見入る2人の少年;「すごい沢山とれたね」
こちらも丁寧な手作業で、傷んでいるものを1つ1つより分けます。
お母さんのそばに座ってお手伝い
お姑さんとお嫁さんで仲良く作業
より分けられた後に箱詰め
なお、以前に本レポートにおきまして、イランの文化や古代伝説ではザクロは豊穣や実り、恒久性などのシンボルとされ、女性のイメージを表すものとみなされていることについてご紹介させていただきました。
今回取り上げましたアルサンジャーン郡が属する、ファールス州の中心都市シーラーズから60kmほど離れた地区には、かの有名な紀元前アケメネス朝時代の古代遺跡・ペルセポリスの石のレリーフが存在します。このレリーフに描かれた、アケメネス朝の王への朝貢使節の手に握られているのは、完全に開ききっていないザクロの花だと言われています。
そういえば、実際のレリーフに刻まれたものと、実際のザクロンの花と比較してみると、非常に酷似していると思われます。
完全に開ききっていないザクロの花
イランはその多種多様な気候風土から、日本で一般的とされる「砂漠の国」というイメージとは逆に、実に豊富な種類の農産物が収穫され、また多様な植物が自生しています。今回取り上げました花ざくろも、イランの植物の多様性の一翼を担っていると思われ、またこれからまさに「実りの秋」を迎える中、各地から様々な果樹などの収穫の便りが聞かれることでしょう。
今後も、豊穣の大地というに相応しいイランの魅力を随時お伝えしてまいります。どうぞ、お楽しみに。