イラン情報

イラン南部の大自然の美「岩塩のドーム」が綾なす絶景

塩分の結晶が生み出す独特の世界

夢の城を連想させるような「岩塩のドーム」

これまでにいくつかのこのレポートの中で、気候風土の多様性に恵まれたイランの大自然の傑作・景勝地の数々をご紹介してまいりました。イランの土壌には塩分が含まれている地域が非常に多く、他には見られない独自性ある景勝地が目白押しです。しかし、このほど知り合いの伝で、イラン南部ブーシェフル州に広がる「岩塩の結晶が形成するドーム」の存在を知るに至りました。筆者もこれまでその存在を知りませんでしたが、今回この地域に広がる絶景を是非皆様にご紹介させていただきたく、本レポートで取り上げることにいたしました。

イランにはいわゆる「ユネスコ世界遺産」に登録されている物件が、世界で10番目に多い27件も存在します(ちなみに、11位は日本で25件)。しかしながら、そうした世界遺産にこそ登録されていないものの、イランには世界に誇る、また他にはない独自の大自然の景勝地が多数存在しています。これまでにも幾度となくお話してきましたように、イランは決して「砂漠の国」ではなく、そのような一般的なイメージからはかけ離れた大自然の魅力が数多く存在しています。そこで今回は、そうした知られざるイランの景勝地の1つで、塩分の結晶が綾なす大自然の芸術「岩塩のドーム」を取り上げたいと思います。

多数の塩分層が重なって形成された「不思議な世界」

まずは、この岩塩ドームの概略についてご紹介しましょう。このドームは正確には「ジャーシャクの岩塩ドーム」と呼ばれ、イラン南西部を走るザグロス山脈の一部を形成しています。正確には、イラン南部のペルシャ湾に面した地域の1つ・ブーシェフル州デイル郡ジャーシャク村北部とダシュティ郡にかけて広がっています。

ブーシェフル州はイラン南西部に位置するとともにペルシャ湾に面しており、以下の地図の青い部分に当たります。

さて、地質学的に6億年もの歴史を誇る「塩のドーム」地帯は総面積が3666ヘクタールにも及び、これは中東最大の規模とされています。

この不思議な地形は地質現象の1つで、コアとなる部分を形成する塩分の結晶上に地下の大きな塩の層が幾重にも重なり、ドーム状に形成されたものです。さらに、地震などの突然の揺れや塩の層の上下運動により、地面が隆起・沈降し、様々な形や大きさの塩のドームが形成されています。

まずはとにかく、以下の写真により、塩分の結晶が生み出す天然の彫刻・絵画とも言うに相応しい絶景の数々をご覧ください。思わずアルプス山脈のマッターホルンを連想しそうな光景

真っ白い塩の海が押し寄せて来るようなイメージ

近くから見た鋭い「塩分の塔」。ここにも幾重にも重なった塩分の層が見られます

塩分の結晶が形成する「塩河」

塩の結晶が集結した河岸を散策する見学者

塩分が形成する滝と滝つぼに見入る見学者

雪のような塩分の結晶が形成する池と島。

雪山が連なったようにも見える塩分の結晶

塩分の津波が押し寄せたようにも見えます

火山の溶岩にも、別の惑星の表面にも見える光景

赤い波が押し上がって来るような光景

塩分の結晶による壁のような連なり

カラフルな塩分の層が幾重にも重なって芸術的な光景を生み出しています

チョコレートとホワイトクリームでできたお城(?)をつい連想してしまいました。雪のお城をイメージさせる光景

白をベースにした結晶。非常に荒々しく見えるものもあれば、上品なイメージを醸し出しているものもあります

これらのドームを形成している色彩豊かな塩分の層は、塩分に混ざっている鉱物によるものです。硫黄が多量に含まれると黄金色に、カリウムが含まれるとオレンジ色に、鉄を含むものは赤や茶色に、炭素や石炭を含むものは黒くなるということです。これらの鉱物が組み合わさっていることから、このドーム全体に特別な景観を生み出しています。

硫黄を含んだ塩分の結晶

また、山脈のように連なった結晶のみならず、大地の隆起や沈降などにより面白い形状が形成されているものもあります。

幾重にも重なった塩分の層の褶曲

褶曲や隆起、沈降を繰り返した末に出来上がったものでしょうか?同じ地球ではなく、火星かどこか別の惑星なのでは、と思わず錯覚してしまいそうです。

キノコのような面白い結晶が連なっている箇所もあります。

褶曲と結晶、小川のトリオ

藤の花房のような結晶もありました

小さな滝がいくつも流れているような結晶の集合

このような塩分が多い土壌には普通、植物が生息するとは考えにくいと思われます。ですが何と、塩分の結晶の間に花が咲いている貴重な光景を見つけました

洞窟の中の様子

塩分の結晶が生み出す絶景を眺めながらの憩いは最高!イラン人の友人知人からも、「とにかく半端じゃなく暑い」「燃えるような暑さ」だと聞いていたイラン南部に、砂漠ではなくこのような意外な絶景が存在すると知ったときには、少なからず驚きを感じました。私自身のイラン滞在は通算約24年にも及びますが、それでも全土は周遊しきれないほどイランの国土は広いのだということを、改めて実感させられました。

確かに近年では、イラン旅行関係のガイドブックも数が増え、掲載内容も増えてきているかと思われますが、今なおそうした書籍にも載っていないと思われる見所は、まだまだたくさんあるかと思われます。このレポートではこれからも、一般的なメディアや書籍にはまず出てこないと思われる、「イランの隠れた見所」や魅力をご紹介してまいります。

来月もどうぞ、お楽しみに。

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。