前回のこのレポートでは、ピスタチオを使った炊き込みご飯の作り方をご紹介してまいりました。ピスタチオ生産のお膝元・イランでは、そのまま乾燥ナッツの1種として食されるほか、料理・お菓子作りにも幅広く使われています。そのため、ピスタチオは乾燥ナッツ販売店で皮つき、または皮なしで売られていると同時に、調理・お菓子作り用として粉末にしたものや細長く切ったものなどが販売されています。
細長く三日月状に切って販売されているピスタチオ
ピスタチオの粉末。生地をきれいな黄緑色にするなど、お菓子作りに大きな役割を果たしています
特に、イランの女性は料理の他にお菓子作りも得意な人が非常に多く、春の新年ノウルーズの際をはじめとして、家庭に来客を招いてもてなす際にも手作りのお菓子が出されることがよくあります。もちろん、イランの製菓店でもその店舗ごとに趣向を凝らした多種多様なお菓子が売られていますが、各家庭の主婦が趣向を凝らす手作りのお菓子には、既製品にはないその家ならではの風味が込められていると思われます。先だってイランは、春の新年ノウルーズを迎えましたが、その際によく見られる親類縁者や友人・知人宅を訪れ、新年のあいさつをする年始回りでも、既製品ではなく手作りのお菓子が出されることも決して珍しくありません。そこで、今回はピスタチオを使ったイランの家庭用お菓子作りをご紹介してまいりましょう。
もっとも、一口にピスタチオ入りクッキーといっても、特にこれといった名称はないようですので、以下のように3つのパターンに分けてご紹介したいと思います。
*パターン1<用意するもの>
・薄力粉 3カップ(1カップを125gで計算してください)
・粉末にしたピスタチオ 1カップ
・サラダオイルもしくはマーガリン 200g
・砂糖 150g
・卵の黄身 2個
・緑の食用色素 お好みの量
・ベーキングパウダー 適量
<作り方>
1.卵やマーガリンなどは冷蔵庫から出して常温のまましばらく置く。ボウルの中などでマーガリンもしくはサラダオイルに砂糖を混ぜ、砂糖の粒がなくなるまでよく溶かす。
2.1.に卵の黄身とピスタチオの粉末を加え、さらによく混ぜ合わせる。
3.小麦粉とベーキングパウダーを3回ふるいにかけ、2.に少しずつ加えていく。マーガリン(もしくはサラダオイル)と卵が完全に混ざり合い、一様になるよう生地を良くこねる。この時、もう少し黄緑色を濃くしたい場合には食用色素を適量加える。
4.ボウルの表面にサランラップをかけて冷蔵庫に入れ、生地を2時間ぐらい寝かせる。
5.生地を麺棒で転がして3~5㎜程の厚さにし、好みの形に型抜きする。
6.オーブン内に生地を間隔を開けて並べ、170℃で12~15分ほど焼いてできあがり。
クッキーが焼き上がってから、チョコクリームなどで表面を装飾することもできます。
*パターン2(チョコレートつき)<用意するもの>
・ピスタチオの粉末 100g
・砂糖 100g
・薄力粉 175g
・固形油(バター、マーガリンなど) 110g
・卵の黄身 2分の1
・緑の食用色素 適量
・板チョコ 100g
<作り方>
1.卵は作業開始30分前に冷蔵庫から出して常温にし、白身と黄身を分けておく。固形油を湯せんなどで液体にし、卵の黄身の半分と合わせてよく混ぜ合わせる。
2.1.に適量の食用色素を加えて、材料全体が緑色になるようにする。
3.別のボウルに、ピスタチオの粉末100gと砂糖100g、薄力粉175gを合わせて、泡だて器でよく混ぜる。
4.3.でできた3種類の材料を混ぜ合わせた生地に、2.を加えてさらによく混ぜ、全体に馴染ませる
5.4.でできた生地を麺棒などで転がして5㎜ぐらいの厚さにし、お好みの型で型抜きする
6.オーブンの天板にクッキングシートをしき、5.でできた生地を並べ180℃で15~20分ぐらい焼く。
7.焼き上がったクッキーを適切な器に取り出し、覚ます。
8.板チョコを、ボウルなどの中で割りほぐし、湯煎で溶かす。
9.溶かしてできたチョコクリームを、7.で焼き上がったクッキー1つ1つの表面に適量塗って出来上がり。
*パターン3
<用意するもの>
・ピスタチオの粉末 300g
・砂糖 150g
・薄力粉(製菓用) 350g
・固形油 100g
・卵の黄身 1つ分
<作り方>
1.ある程度の大きさのボールの中に小麦粉、ピスタチオの粉末、砂糖を入れ、よく混ぜ合わせる。
2.別のボールに卵の黄身、固形油を入れ、固形油が完全に卵の黄身と溶け合うように電動ミキサーなどでよく混ぜる。
3.1.で作った小麦粉とピスタチオの粉末、砂糖を混ぜ合わせたものに、2.で作った固形油と卵の黄身を混ぜ合わせたものを加える。小麦粉の粒が残らないよう、2.は少しずつ加えながら混ぜ合わせる。
4.材料が全体に均一になるまで完全にこね続け、パン生地のような状態にする。
5.出来上がった生地を麺棒で平にし、5㎜ぐらいの厚さにする。
6.5.でできた生地を型抜きなどで好みの形に型抜き、もしくは、一口大の大きさの円形にし、20分ぐらい冷蔵庫の中で寝かせる。
7.オーブンを180℃に温めておく。天板に、オイルを塗ったクッキングシートをしき、間隔を開けて5.をシート状に並べ、15分ほど焼いて出来上がり。
*ピスタチオ・ケーキ
<用意するもの>
・大きめの卵 3個
・バニラの粉末 紅茶用スプーン半分
・牛乳 半カップ
・ピスタチオの粉末 1カップ
・砂糖 1カップ
・サラダオイル 半カップ
・薄力粉 1.5カップ
・ベーキングパウダー 紅茶用スプーン1.5杯分
・カルダモンの粉末、もしくはすりおろし 紅茶用スプーン2杯弱
<作り方>
1.卵とバニラの粉末を、高速ミキサーでおよそ6分間、全体が淡白色になるまで混ぜ合わせる。
2.1.に牛乳を加え、電動ミキサーで30秒ほど混ぜる。次に、サラダオイルを加えて電動ミキサーでさらに30秒間混ぜ、材料が完全に溶け合うようにする。
3.小麦粉をふるいにかける。ベーキングパウダーとカルダモンの粉末を加えてよく混ぜ合わせ、再びふるいにかけ、これに2.を加える。
4.一定方向に円を描くように混ぜ、完全に混ざったところでピスタチオの粉末を加えて、さらに全体に馴染ませる。
5.パウンド型に、油を塗ったクッキングシートをしき、4でできた生地を流しこむ。生地を流し込んだパウンド型を、2回ほどテーブルに軽く打ち付けて中の気泡を抜き、ケーキの表面を他のピスタチオで装飾する。
6.オーブンをあらかじめ温めておき、175℃で40分~45分ほど焼く。
7.爪楊枝などを突き刺して、中まで焼けているかをチェックし、焼けていたらオーブンから取り出して冷ます。
8.パウンド型からケーキを取り出し、クッキングシートを取り外す。この時、お好みでチョコクリームやハチミツを表面に塗ってもよい。
9.さらにお好みで、アーモンドやクルミ、ゴマなどで装飾してもOK。適切な大きさに切って、さらに盛り付けて出来上がり。
以上、ピスタチオを使った比較的作りやすいと思われるお菓子の例をいくつかご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。今回取り上げたもの以外にも、バリエーションは沢山ありますが、まずはごく基本的なパターンで「西アジアの風味」に親しんでいただければと思います。
来月のレポートも、どうぞお楽しみに。