料理

イラン版ちらし寿司・モラッサポロウをどうぞ

カラフルな具に彩られたモラッサ・ポロウ

様々な具の盛り付けによりイメージが変わるモラッサ・ポロウ

イランでも真冬の厳しい寒さが薄れ、日中は幾分暖かさが感じられるようになりました。

この原稿を執筆中の現在、イランではノウルーズと呼ばれる、この国独自の太陽暦の春の新年を控え、そろそろ年末の大掃除や歳末の買出しが始まっています。中国文化圏の春節に相当すると思われるノウルーズは、西暦ですと毎年3月21日の春分の日に当たり、今年は今月の21日をもちまして、イラン暦1402年を迎えることになります。

一方、日本では3月3日は「桃の節句」、すなわちひな祭りとされ、雛飾りや雛あられ、さらには海老やれんこん、豆など、縁起物の具材をたくさん入れたちらし寿司がこの日の祝い膳に登場するのではないでしょうか。

そこで今回はこれにちなみ、イラン版ちらし寿司ともいえる「モラッサ・ポロウ」の作り方をご紹介してまいりたいと思います。ちなみに、ポロウはイラン式のライスを指しており、モラッサとはペルシャ語で「宝石をちりばめた」という意味の形容詞です。

何種類もの色鮮やかな具で彩られた、イラン版ちらし寿司を是非お楽しみください。

<用意するもの・4人分>

米(できればインディカ米)   4合

鶏の胸肉            1つ

干しぶどう           30g

バーベリー           100g

玉ねぎ(中サイズ)       3つ

アーモンド(細長く切ったもの) 1/4合

ピスタチオ(細長く切ったもの) 1/4合

オレンジの皮(オレンジ2個分)

湯で溶かしたサフラン      カレー用スプーン3杯

シナモン            紅茶用スプーン半分

レモン汁            カレー用スプーン2,3杯

砂糖              カレー用スプーン2杯

胡椒              カレー用スプーン半分

ターメリック          紅茶用スプーン半分

シナモン            紅茶用スプーン半分

サラダオイル、塩        適量

<作り方>

1.米を洗い、カレー用スプーン1杯分の塩を入れ、1時間から3時間ほど水に浸けておく。オレンジの皮のオレンジ色の部分を2,3センチほどの長さの細切りにし、1時間ほど水につけておく

2.片手なべ、もしくは小さめの鍋に1.で作った刻んだオレンジの皮を入れ、適量の水を加えて弱火で沸騰させる。一煮立ちしたら中の煮汁だけを捨てて新たに水を入れて、再度沸騰させる

3.オレンジの皮の苦味がなくなるまで、水を取り替えてオレンジの皮を煮る。苦味がなくなったところで煮汁を捨て、少量の油を加えて弱火で炒める。それから、カレー用スプーン1杯分の砂糖を加えてさらにゆっくり炒め、オレンジの皮が透き通ってきたら火からおろし、取っておく。

4.鶏胸肉をよく洗い、大きめのサイコロ状に切ってボールに入れ、玉ねぎ1個を薄切りにしてこれに加える

5.4.に適量の塩とレモン汁を加え、手でよく混ぜ合わせ、ボールにサランラップをかけて冷蔵庫に入れておく

6.玉ねぎ2つ分を皮をむき、薄みじん切りにする

7.フライパンを中火にかけ、適量のサラダオイルを入れて熱する。油が熱くなったら6.でみじん切りにした玉ねぎを入れ、玉ねぎの色が透き通ってくるまで炒める

8.5.で作っておいた鶏胸肉を冷蔵庫から取り出し、7.に加えて炒める。鶏肉の芯まで火が通ったら胡椒とターメリックを加え、フライパンに蓋をかぶせて、鶏肉が玉ねぎの汁で煮えるようにする

9.フライパンに蓋をかぶせた状態で、15分ほど弱火で蒸し炒めにする。この間に、湯で溶かした粉末サフランを少量、適量の塩を加える。さらに、カレー用スプーン1杯分のレモン汁と紅茶用スプーン半分のシナモンを加えて混ぜ、火を止める

10.湯とり法で米飯を作る。鍋に水を沸騰させてインディカ米を入れ、半煮えの状態で米をざるにあけて水を切り、別の鍋に少量の油を敷いて半煮えの米を入れ、米全体に少量の油をうふりかけ、蓋をかぶせて弱火で30分から1時間ほど蒸らす

11.アーモンド、干しぶどう、バーベリーを別々によく洗い、ざるにあけて水を切る

12.フライパンに少量の油を入れ、弱火でアーモンドを3分ほど炒め、別の容器に入れてとっておく。

13.次に、干しぶどうを同じ要領で炒める。干しぶどうが膨らんだらフライパンからおろし、別の容器に入れてとっておく

14.バーベリーも同じように炒める。少し熱したところで、紅茶用スプーン1杯分の砂糖を入れてさらに少々炒め、火を止める

15.10.で蒸らしておいた米飯の火を止め、蓋を開けて冷ます。炊き上がった米飯の一部を、湯で溶いたサフランで黄色く色づけする

16.サフランで染めていない米飯を大皿に盛り、3.で作ったオレンジの皮、9.で作った鶏肉、12.のアーモンド、13.の干しぶどう、14のバーベリー、15.の黄色く染めたライス、ピスタチオ(炒めないでそのまま)を盛り付け、装飾する。

まさに、イラン版ちらし寿司ともいえそうなこのメニューは、盛り付け方によって様々なバリエーションができ、見る者の目を楽しませてくれます。

以下に、モラッサポロウの盛り付け例をいくつかご紹介しましょう。

パイ状に具を分割

具を帯状に盛り付けた例

勾玉上に盛り付けた例

おこげを添えた例。

また、付け合せとなるサラダやヨーグルトなどにも趣向を凝らすことで、パーティー用メニューにもなります。

なお、今回ご紹介しましたモラッサ・ポロウの起源は、今から500年ほど前に栄えたサファヴィー朝時代にさかのぼるそうです。この王朝は、現在の中部イスファハーンを都として非常に栄え、「イスファハーンは世界の半分」と言われるまでに隆盛を極めたこともあり、モラッサポロウをはじめとする様々な宮廷料理が生まれ、進歩した時代だったとも言われています。そうした時代背景から、特に盛り付けにあたって色とりどりの複数の食材を駆使し、見た目を華やかに装飾するという技法が発達したとのことです。イラン文化のこうした煌びやかな側面は、あの色鮮やかなペルシャ絨毯のみならず、まさに食文化にも見事に反映されているといえるのではないでしょうか。

今後も随時、イラン料理の魅力をお伝えしてまいりたいと思います。どうぞお楽しみに。