サラさんが初めて旅行した日本での1枚;「母国にはない光景です」
日本の自動販売機;「街中の至る所にあり、色々な物が販売されていることに驚きました」
このレポートをまとめております現在、イラン情勢がにわかに世界で注目を集めています。
昨年末から先月まで1カ月近くにわたりイランで発生した一連の騒乱は、やっと収束しましたが、現地では今なお経済面での混乱をはじめ、色々な分野での不安定な状態が続いています。現在のイランはまさに、国運をかけた岐路に立たされていると言ってよいのではないでしょうか。先月は特に、ネット遮断により国内外の連絡・通信はもとより、ネット産業などをはじめ、イランの多くの分野に大きな影響が及びました。この期間中、家族や親族などがイランにいる在日イラン人は、連絡・通信もままならない中で母国にいる自らの大切な人々の安否を気遣い、非常に不安な日々を過ごしたと思われます。それは、イラン人の夫がおり、その家族親戚のほか、20年以上の滞在でイランの多数の友人知人が現地にいる筆者も、決して例外ではありません。
そのような中、今回は筆者のイランでの20年来の知人で、昨年来日したイラン人女性サラ・ザヒーリーさん(1987年、テヘラン生まれ)にホットな話を聞くことができました。彼女は、まだ日本語もそれほど良くは分からないとしつつも、日本の文化や生活に親しみ、日本での生活に非常に満足しているということです。また、日本での生活を謳歌しつつも、これまでの滞日中に母国で戦争を初め、特に最近の一連のデモ騒乱の際には、母国の家族を思い非常に不安な日々を過ごしたと語っています。今回は、そうしたサラ・ザヒーリーさんへのインタビューを交えながら、また旅行好きの彼女が日本国内を旅行した際の写真とともに、もう1人の在日イラン人女性の今をお届けしてまいります。
たくさん並ぶお地蔵様と空海の像;「日本の文化は仏教徒と深いつながりがあることが分かります。こうして道行く人や旅人を守ってくれているのですね」
ー筆者(以下Q);来日したきっかけはどんなことだったのでしょうか。現在は、何か仕事はしていますか?
ーサラさん(以下S);私は2025年5月に家族滞在ビザで来日しました。夫は私より6ヶ月前に就労ビザで来日しており、現在は神奈川県川崎市に3匹の猫も一緒に暮らしています。現在、日本語の勉強をしながらパートで働いていますが、将来は日本で観光分野で起業したいと思っています。ちなみに、夫は日本で英語教師をしており、英ケンブリッジ大学で英語教育の学士号と修士号を取得した他、米国ワシントンD.C.のクアンティック・スクール・オブ・ビジネスで経営学の修士号を取得しています。
私が日本に来た目的は、もちろん主人の仕事の都合もありますが、先進国ならではの平和や秩序・規律があり、尚且つ安全な生活を送りたかったからです。
ーQ;それは日本人としてとても嬉しい限りです。それに、日本での起業を考えていらっしゃるなんて、素晴らしいですね!応援します。その辺りの詳しいことはまた後ほどお伺いするとして、これまでに、日本以外の他の国に暮らしたことはありますか?その国と比べて、日本での生活はいかがでしょうか?
ーS;私たちは日本に来る前は、トルコの最大都市イスタンブールに3年間、ジョージア首都トビリシに数ヶ月、そして中国に2ヶ月住んでいました。というわけで、比較的滞在期間が長かったのはイスタンブールです。日本と比べると、イスタンブールは音楽に溢れた、とても活気のある街だと思います。私の見たところ、日本人はどちらかといえば勤勉さを重んじていて、トルコ人は楽しみ事、旅行、そしてパーティーをより大切にしているようです。しかし対照的に、日本ははるかに治安が良く、経済も安定しており、そして豊かな歴史があり、しかもとても清潔で、衛生状況がとても優れた国だと感じます。これに加えてしっかりした法規範や秩序、そして他国よりも比較的インフレが少ないことにも、私たちは安心感と満足感を感じています。私にとって、日本に滞在することはとても楽しい経験となっています。
ただ1つ、私のこれまでの経験から、他の国と比べて日本では野菜や果物の種類が非常に限られているように感じます。果物、野菜の種類の豊富さという点では、私がこれまで住んだ国の中ではトルコが一番、2位は中国、そしてジョージアと日本だと感じています。日本でより楽しい生活を送るためには、地元の食べ物、和食を楽しむことをもっと学ばなくてはと考えています。
ーQ;これまでに、日本のどの地域・都市を旅行しましたか?旅行はどうでしたか?
ーS;去年の秋には箱根、京都、奈良、大阪、神戸、広島を旅しましたが、この春もこれらの都市を全て旅行出来たらいいなと思っています。私のこれまでの最高の経験の1つは、日本国内を一人で旅行したことです。この旅の間、危険を感じたことは一度もなく、この国はとても安全だと感じました。日本は本当に美しい国で、まるで愛情あふれる母親のように両手を広げて私を迎えてくれているように思います。それぞれの街にそれぞれ独自の美しさがありましたが、どこが一番良かったかと聞かれれば、個人的には京都だと思います。京都はまるで、美しい蝶の羽根のような街ですね。
お寺に続く木立の中の道;「森林の中のきれいな空気を吸いながら歩きました」
「日本三景の1つ・厳島神社は、特に印象に残った場所の1つです」
背の高い竹林を見上げた時の風景にびっくり;「竹林には普通の樹林とは違う雰囲気を感じます」
「マンホールの蓋にまで美しい大阪城が刻まれています。さすがは大阪ですね!」
お台場の自由の女神像:「レインボーブリッジの背景と見事に調和していると思いました」
このように、日常生活はもちろん、来日してまだ1年足らずながらも日本国内の複数都市を1人で旅行するなど、サラさんとお話ししていて非常にバイタリティーが感じられました。しかし、このように日本の生活の生活を楽しみながらも、昨年末から先月にかけてのイランでの一連の騒乱、そしてインターネット遮断という事態には非常にやきもきしたようです。
ーQイランでの先月のデモ期間中はネットがつながらず、不安だったと思います。イランのご家族・ご親戚、友人知人などとは連絡がとれましたか?どんな気持ちでしたか?
ーS;インターネットが3週間も使えなくなった間、家族と連絡が取れず、とても不安でした。日本はネットが使えるのに、母国イランではネットが遮断されていて、いつも普通に使っているアプリや連絡手段では連絡がつかない。自分は、インターネットもあり、自由で安全で清潔な素晴らしい国での生活を謳歌しているのに、母国の家族や友人は大変なことになっている。でも、自分は日本からはどうすることもできない。日本でのニュース映像を見るたびに「どうしよう、どうしよう、無事でいて欲しい」と祈るような気持ちでした。「友人の誰々がデモに出かけて、危ない目に遭った」などというニュースも入ってきましたし、あの騒乱で亡くなった人の数が公式発表より何倍も高い、などという情報もありました。この時代にネットがつながらないのは、本当に困ったものだと感じました。色んなニュースを聞くたびに焦りと不安が募りましたが、幸い家族や友人は無事でした。こうしたこともあってか、私の家族も「将来は日本に来て生活したい」と考えるようになっています。
ーQ;あれからしばらく経って現在は、今のところ騒乱も収まってネットも復旧し、とりあえずは安心できますよね。これからも日本に住みたいですか?将来は何をしたいですか?
ーS;現時点では、将来のことは確実には決められませんが、私は日本人のような高いレベルでの日本語や日本文化の習得を希望しています。そして、最初のところで少々お話しした通り、観光分野・旅行ガイド関係の仕事で起業することを考えており、残りの人生を日本で過ごしたいと思っています。
ーQ;素晴らしいですね!これからが楽しみですね!最後に、日本人の読者の皆様にメッセージをお願いします。
ーS;日本では、特に街中で英語を話せる日本人はほとんどいないため、私の人生最大の課題は日本語の習得です。ですが、日本は旅行先・観光目的地として最も美しい国の1つだと思います。安定していて平和で、非常に穏やかで威厳があり、個性豊かな人々が暮らす国です。自信を持ってください!そのような素晴らしい国で、もっと日本語を覚えて日本の皆様と沢山コミュニケーションできるようになりたいですし、末永く日本で暮らしたいです!私はこれまで長年、日本語や日本文化に魅力を感じていまして、ゆくゆくは日本を第二の故郷にしたいと思っています。
ーQ;有難うございました。今後とも日本での生活を楽しみ、また起業という目標達成とともに、益々の成功をお祈りいたします。
「イラン北部にも切妻屋根の建物はたくさんありますが、仏教関係の建築は同じ切妻屋根でも独特の雰囲気があると思います」
「緑豊かな山林の中を走る線路を目にすると、再び列車に乗って日本国内のどこかを旅をしたくなります」
今回ご登場いただいたサラさんは、お話していて日本での生活を心から気に入り、またとても向上心に溢れ、未来に向けて努力しているという姿がうかがえました。しかし、その彼女も現在のイラン情勢に照らして、日本での生活を謳歌しつつも非常に不安な日々を送ってきたそうです。
特に昨年末のデモ騒乱発生以来、世界のメディアでイラン情勢が日々メディアを賑わせるようになりましたが、ここへきてアメリカとの協議を皮切りに、果たしてアメリカがイランに対してどう動くのか、そしてイランはどう対応するのか、ひいてはイランの国運や如何に、と言う事柄がにわかに注目を集めています。イランは中東・西アジアの情勢の鍵を握る重要な国であり、イラン情勢の動向は少なからず西アジア全体はもとより、世界に影響を及ぼすと考えられます。筆者はもちろん、今回ご紹介したサラさんを初め、その他の在日イラン人も固唾をのんで母国の動向を見守っているのではないでしょうか。イランに長年滞在歴があり、現地に家族を初め多数の友人知人がおります筆者自身も、サラさんや他の在日イラン人の気持ちが手に取るように分かりますし、このレポートを書き進めながらイラン情勢にいつも以上も注目し、少しでも良い条件での事態の収束を祈るような気持ちで日々を過ごしてまいりました。イラン情勢は先月とは大きく変貌し、今度はアメリカやイスラエルといった世界の他の有力な勢力が公然と関与してきています。イランは正に現在、中東情勢の台風の目と言ってもよいかもしれません。まずは、来月のレポートをお届けするころにはイランを初めとする中東情勢が少しでも落ち着いていることを願っています。そして、「雨降って地固まる」と言われるように、現在の一連の成り行きが何とか丸く収まり、イランという国とその国民、ひいては世界にとって良い結果で終わるよう祈願しつつ、今月のレポートを締めくくりたいと思います。
