イラン情報

知られざるイランの見所・北西部アルダビールのガラスの吊り橋

北西部アルダビールのヒール吊橋;全長約200m

イラン初の全面ガラス張りの橋;ヒール吊橋

先月、拙テヘラン便りはお蔭様をもちまして、開始10周年という大きな節目を迎えることができました。これまでの10年間に、日本では一般的にあまり情報が得られにくいと思われるイランの意外な見所や日常生活の一こま、年中行事など、様々なテーマで、また多角的な視点からお伝えするよう努めてまいりました。それでもイランにはまだまだお伝えしきれていない魅力がたくさんあります。今月よりまた気分新たに、イランのそうした真新しい魅力を日本の皆様にお伝えすべく、精進してまいりたいと存じます。

幸い、イランでは昨今やっと、これまで長らくにわたった新型コロナウイルスの感染拡大も、ひところに比べて大分収まってきた感があり、人々の往来や活動が平常を取り戻してきています。そのような中で、イラン国内の人々の移動も活発化し、観光地でも見学者の数がコロナ前に近づきつつあるということです。

さて今月は、イランの意外な見所、最近とみに注目を集めている観光スポットとも言える、国内初のガラス張りの吊橋をご紹介してまいりましょう。

 

西日に映えるヒール吊橋

 

ガラスの吊橋といえば、中国吉林省や湖南省にあるものが、長さとともに有名ではないかと思われます。また最近では、去る4月30日にベトナム北西部ソンラ省におきまして開通した、世界最長のガラス橋・バクロン橋(全長632m)が、皆様のご記憶にも新しいのではないでしょうか。ベトナム北西部の「世界最長のガラスの吊橋」

 

ですが、ガラス張りの吊橋は、実はイランにも存在しており、それが今回ご紹介する、北西部アルダビール州のヒール吊橋です。この橋は同州の中心都市アルダビール市から22km離れたヒールという町のヒールチャーイ渓谷地帯(総面積はおよそ234ヘクタール)にあります。

ちなみに、ヒールの町はさくらんぼやサワーチェリーを栽培する果樹園が数多く存在しており、州内の都市庭園として知られるとともに、「さくらんぼの町」、「楽園の町」の異名をとっています。

ヒールつり橋は全長200m、横幅は1.2mで、地上からの高さは100mにもおよび、5層のガラスとラミネート材、そしてイラン国内産のガラス部品や金属ケーブルで造られています。ちなみに、このつり橋は2017年に着工し、2020年6月11日に開通しました。

ヒールつり橋の全景

この橋は床をはじめ全面がガラス張りであることから、橋の下を流れるヒールチャーイ川をはじめ、連綿と連なる岩岩や樹林を見渡すことができます。また、橋全体を歩いて渡り見学するための所要時間はおよそ30分とのことです。

これだけ壮観で、外部から見てもスリル満点のガラスのつり橋といえば、外国の技術や資材が入っているのかとつい想像してしまいますが、使用されている資材はもちろん全て国産で、この橋の設計・建築の一切合財は地元の技術者によるものだそうです。

ガラス越しに足元をのぞくことができるのも、この橋の大きな魅力の1つです。

なお、このつり橋は行楽設備群の一部となっており、この施設群内にはアドベンチャー施設のほか、レストランやホテルなどの宿泊施設、スイミングプールなどに加えてボルダリング、トランポリン、バグジャンプ、ジップライン、子供用の遊園地などの施設も整っています。

ヒールつり橋の特徴は、全面ガラスのつり橋であることと同時に、完全に平坦・真っ直ぐではなく、弓なり型であることです。そのため、この橋は弓なり型に湾曲したガラスのつり橋としては、世界初とされています。

橋を渡る人も、その様子を遠巻きに見る人にとっても、興奮のあまり体がゾクゾクしてきそうです。

この地域には霧が立ちこめる場合もあり、霧の中でこの吊橋を渡るのも中々興味深いのではないでしょうか。

実際に、この橋は完全には水平ではなく、一方に傾いています。傾いているガラスのつり橋を渡る気分は、どのようなものでしょうか!?

 

夜のヒール橋も乙なものです。

橋の下から撮影

橋の真ん中で高所の醍醐味を満喫。「スリル満点!」

楽しそうにガラスの床面をわたる子供たち

家族で記念撮影。

どのお客さんも、地上100mのガラスの吊橋とあって興奮気味です。

幼少時からこういう場所に慣れていれば、大人になってからも高所恐怖症にはならないかもしれませんね。

 

新緑の時期のヒール橋。真上から撮影。

曇り空の中でも多くの観光客が訪れています。橋の末端には20段ほどの階段があります。

このつり橋は、渡ってスリルを味わい、橋からの眺めを楽しむのみならず、その全景を遠くから楽しむこともできます。様々な時刻や折々に見られる景色は、非常に壮観です。

雨雲と新緑に見事に調和したヒール橋

青空と白雲の中のヒール吊橋

周辺に靄の立ち込めた日没時の様子

なお、地元関係者の話では、旧来からあった名所旧跡に加えて、このつり橋ができたことは、アルダビール州の大きなセールスポイント・看板となり、今後益々の町おこしや観光客の誘致に大きく貢献するだろうということです。

今後再び、国内・海外への渡航や気軽な観光がしやすくなり、またイランを訪問する外国人観光客が増大し、イランや日本、ひいては世界の観光業全般が回復、一層の発展を遂げることを願いつつ、今月のレポートを締めくくりたいと思います。

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。