日常生活

イラン各地からの雪だより

一面の雪に覆われたテヘラン市内~市内西部のミーラード・タワーより撮影

 

雪化粧したテヘラン市内

 

雪遊びに興じるイラン人

 

日本と同様に北半球に位置するイランも現在冬を迎えており、特にこの冬は全31州のうち20の州で積雪が見られるなど、本格的な寒さが訪れています。一般の日本人の皆様にとりまして、イランと言えば砂漠、暑い国というイメージがわくかもしれません。しかしながら、イランはケッペンの気候区分にある14の気候区分のうち、極地に見られる氷雪気候などを除いた12の気候区が存在し、冷帯や亜寒帯も決して少なくありません。首都テヘランは、東京都とほぼ同緯度に位置し、四季の変化があることから冬も必ず到来し、またそのほかの広範囲の地域でも夏と冬、昼と夜の寒暖の差が大きい大陸性の気候区が見られます。そこで、今回は真冬のさなかにあるイラン各地の雪便りをお届けしてまいりましょう。

 

雪の積もった車。フロントガラスも真っ白です。(テヘラン市内)

雪の中に紅一点(西部ガズヴィーン州)

テヘラン市内の公園

 

イランに雪、というのは、第1印象として少々信じがたいことかもしれません。しかし、イランは首都テヘランをはじめ、北部、北西部や西部、北東部や中部などの広い地域で積雪が見られます。もう何年も前にテヘランで30年ぶりの大雪を観測し、市内でも多いところでは1メートル近くの積雪が見られました。一方で特に北西部のアルダビール州、中西部ハメダーン州などは国内でも有数の豪雪地帯として知られています。

雪の日のブーアリー・スィーナー廟(ハメダーン市内)

 

ハメダーン市内の路地の一角

 

アルダビール市内の雪解け道

 

雪による影響を真っ先に受けるものの1つとして、交通機関が挙げられるのではないでしょうか。雪により公共の乗り物など、人々の移動手段に影響がでるのはイランでも他の国と変わりません。以下は、テヘラン市内での大雪による渋滞の様子です。

 

大雪に見舞われたテヘラン市内の高速道路での様子。こうした雪解け道ではスリップ事故も多発します。

 

 

大雪に見舞われたテヘラン市内の目抜き通り

 

雪の積もった路上で車が滑り、何度か回転したと思われる箇所もありました。

 

高速道路でも、凍結した路面で車がすべり、逆方向に回転した光景が見られました(北東部マシュハド)。

 

道路に積もった大雪に車がはまってしまい、何人もの人の助けを借りて車を動かさなければなりません(北部ラシュト市にて)。

 

さあ車ででかけようとしたら、たくさん雪が積もっていて動けません。さてどうしたものでしょうか(北部ラシュト市にて)。

 

横断歩道のそばに、白い文字で示された「通学路」の表示。実際にはペルシャ語で「学校」と書かれています(テヘラン市内)。

 

ひざ上まで雪が積もっても、今日は学校は休みではありません(北部ラシュトにて)

 

市場内で見られた大量の積雪(北東部ゴレスターン州ゴルガーン市)。

 

 

寒い中で、人々の安全のために交通整理をするお巡りさん、お疲れ様(テヘラン市内)!!!

 

積雪の際は、特に交通量の多い道路などは早急に除雪作業を行う必要があります。特に夜に雪が降った場合、翌朝以降の交通の混雑を考えて、夜間に除雪作業が行われる事もしばしばです。以下の写真は、除雪に加えて雪により倒れた樹木の片付けの様子です(テヘラン市内)。

 

人通りの多い道路や、家屋の入り口が面している路地の雪は真っ先に片付ける必要があります(北部ラシュト市)。

 

除雪作業の間に一息つく作業員さん。笑顔で撮影に応じてくれました(テヘラン市内)。

 

しかし、人の力だけは到底追いつくものではなく、除雪車の出動もかかせません(北西部アルダビール市)。

 

昔ながらの家並みの中での雪下ろしの様子(西部ガズヴィーン州)。

 

自宅の戸口の雪かきをする女性(西部ガズヴィーン州)。

大雪の影響は、陸上交通のみならず、空の便にも影響を及ぼしています。以下の写真は、北東部マシュハド空港での除雪作業の様子です。

 

飛行機にも雪が積もっています(マシュハド空港にて)。

 

北東マシュハドにあるシーア派の聖地、シーア派8代目イマーム・レザー廟も、雪に包まれています。しかし、雨が降ろうと槍が降ろうと、大雪が降ろうと巡礼客がやってきます。彼らの信仰心には本当に脱帽です。

 

 

しかし、何事にもプラスとマイナスがあるのは、大雪に関しても同じです。イランでも、このような折には雪だるまを作ったり、雪の上を滑ったりして楽しむ人々は決して少なくありません。大雪のために学校が休みになって子供たちが大喜びするのは、イランでも変わりありません。

イラン北部ラーヒジャーンで見かけた雪だるま。ちゃんとマフラーまでかけてもらっています。

 

北西部タブリーズで雪遊びに興じる親子。親御さんも童心に返って、雪遊びを楽しんでいます。また、子供の姿を微笑ましく見守る親御さんの様子も印象的です。

 

世界中どこであれ、子供が楽しそうに大自然の中で遊んでいる様子には、何かほっとさせられるものがあります。

 

こちらの雪だるまは、少年2人による合作です。なかなかよくできています(北西部アルダビール州にて)。

 

積もった雪がかもし出す絶景に感動し、自撮りする女性たち。

 

ふんわりと積もった雪の上に大の字に横たわるのも、子供たちにとって雪の日の楽しみの1つかもしれません(ハマダーン州)。

 

雪の夜にテヘラン市内でドライブに興じる若者。Vサインが決まっています。

 

雪の中でピクニックを楽しむ家族連れの様子。「うわっ、嫌だなあ」と億劫がるのではなく、むしろちょっと見方を変えて雪を楽しむゆとりがあってもいいのかもしれません(北西部ウルミエ市)。

 

「ほら、足元に注意して」と優しく妻の手を取る男性(西部ガズヴィーン州)。

 

「やあ、寒い中ご苦労様です。お気をつけて」、「ちょっとそこまで、手押し車で運んできます」と、挨拶を交わす地元の男性と警備員(西部ガズヴィーン州)。

 

大雪が降ると、野良犬や野鳥たちも寒さをしのがなければなりません。えさを探すのも、体を横たえる場所を見つけるのも一苦労です(アルダビール州にて)。

 

雪の積もった家屋の屋根に集団で留まる野鳥(アルダビール州)。煙突しか出ていないということは、相当たくさんの雪が積もっていると思われます、

 

雪の間のエサを探す野鳥(北部ラシュトにて)。

ちょっとした石の割れ目の間に根を張り、冬の寒さに耐える植物も見られました。

 

このバラは、どうやら季節外れに咲いたもののようです(西部ロレスターン州にて)

 

金網にも雪が積もり、大変面白い光景ができています(中部ヤズド州)。

 

 

見事に雪化粧したファラコル・アフラク城砦(西部ロレスターン州)

 

雪の降りしきる三十三間橋での様子(中部イスファハーン州)。

 

雪をかぶった世界遺産・シェイフロトフォッラー・モスク(イスファハーン州)。

 

イランの過去の王朝時代の栄華を物語るチェヘロソトゥーン宮殿も、雪に覆われています(西部ガズヴィーン州)。

 

そして最後に、イランの冬の風物詩ともいえる2つの温かい食べ物をご紹介しましょう。1つは、ビート(テンサイ)で、冬になると街頭のあちらこちらで、ビートの煮込みを販売する屋台が出ます。寒い中でもうもうと湯気を立てているビートの煮込みは、大変人気があります。

 

そして、冬のイランでよく見かける食べ物には、蚕豆の煮込みがあります。こちらは、少々香辛料で味付けがしてあり、やはり体を温めるのに最適です。

 

以上、真冬のさなかにあるイラン各地の様子をお伝えしてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。これから最低1ヵ月半ほどは、イランではまだまだ冬の寒さが続きますが、そのような中にも、心の和むほのぼのとした一こまが、これからも沢山見られることでしょう。

さて、イランでは来月はいよいよ、イスラム革命40周年記念という大きな節目を迎えることになりますが、それに向けての準備も着々と進められているようです。

来月もまた、イランの最新情報をお伝えしてまいります。どうぞ、お楽しみに。

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。