旅行

イラン北部の田園地帯の名所・マースーレ村

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先日、イランを初めとするイスラム諸国のラマダン入りを前に、日帰りでイラン北部の観光名所・マースーレ村に行ってまいりました。今回は、この旅行についてご報告することにいたしましょう。

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マースーレ村は、山の斜面にへばりつくような形の、階段状の家並みが見られる、有名な見所です。具体的に申し上げますと、ある家の屋上が、その上の階の庭あるいは通り道になっているという、非常に面白い造りになっており、又建物の多くは2階建てです。この村は、カスピ海に面したイラン北部・ギーラーン州に属していますが、地図で見ますと南側はザンジャーン州に隣接しています。およそ、海抜1000メートルの高さのところにありまして、全体は緑に囲まれています。この家並みの集合体が、1つの村を形成しておりまして、このマースーレ村の関係者の方のお話によりますと、外部からの敵の侵入を防ぐために、このような場所にこうした建築様式の家屋を建てて人々が住むようになったということです。ですが、マースーレ村の調査そのものがそれほど進んでおらず、歴史的に解明されていない点が多いため、今後の調査を待たなければならない、ということでした。

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マースーレまでは、テヘランからバスで5,6時間かかりました。もっとも、途中で食事や休憩の時間が入りましたので、実際には所要時間はもう少し短くなると思います。それからマースーレを訪れるベストシーズンですが、個人的にはやはり春から夏の緑のきれいな時期がお勧めです。それから真冬に真っ白な雪を被った、銀世界のマースーレも写真で見ましたが、これもなかなかきれいでした。

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さて、観光名所として名高いこのマースーレ村は、イランの重要文化財にも指定されています。この村の観光文化遺産協会の関係者の方のお話では、今からおよそ700年ほど前からこの村に、イラン各地から人々が移住してくるようになり、また現在のような階段状の家並みが造られるようになったのは、18世紀のザンド朝時代だということです。また、マースーレという村名の由来は、一説によりますと『山のようなところ』という意味を表すとのことでした。

 

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山の斜面にある村ですから、村内を見て回るにも階段を上ることになりますが、さて、いざ村内に入ると、いつも聞きなれているペルシャ語とは全然違う言葉が耳に入ってきました。マースーレ村が属するギーラーン州の方言・ギーラキー方言なら、テヘランでこの州の出身の友人も数多くいますので、耳にする機会もあるのですが、どうやら、この村で使われている言葉は、ギーラキー方言とも違うようです。そこで、ある茶店のようなところの店員さんに聞いてみたらなんと、この山あいの村ではターリシ語という独特の方言が話されている、ということでした。もう少し詳しく申し上げますと、このターリシ語はこのマースーレ村のほか、この村の属するギーラーン州の北半分(この州の中心都市ラシュト、港湾都市のバンダルアンザリー、アゼルバイジャンとの国境都市アースターラー、さらにはそのイランの隣国アゼルバイジャンにもこの言語を話す人がいるということです。標準語とは全く違う言葉でして、初めて耳にしたときには非常に驚きました。しかも、このターリシ語は古代のイランで話されていた、パフラヴィー語に非常に近い言語だそうです。また先にお話した事情で、この村には観光客が非常に多くやってきますから、標準のペルシャ語はもちろんですが、独特のターリシ語の他に、この村の属するギーラーン州の方言であるギーラキー語も通じるということでした。ですから日本でいえば、北海道で標準語のほかに北海道独特の方言プラス、アイヌ語が使われているという状況になるのではないでしょうか。

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マースーレ村自体で売られていたお土産のほとんどは手工芸品でして、色とりどりの毛糸で編んだ靴下や人形、手作りのポシェットやかばん、かご、ザル、装飾品が並べられているのが印象的でした。さらにはギーラーン州郷土銘菓で、日本の甘食に似たクルーチェと呼ばれる平べったいお菓子も有名です。色々な種類のオリーブのピクルスが売られていまして、あるお店先でお味見させてもらったらとてもおいしかったので、私も買い求めました。

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そして、ここで食べられるおいしいものはやはり何と言っても、この州の郷土料理ミールザー・ガーセミーです。これは、直火で皮ごと焼いたナスの皮を向いてつぶしたものに、トマトや卵などを混ぜた料理です。もちろん、今ではテヘランでも家庭料理として食卓に登場しますが、やはり本場の味は格別ですね。しかも、このミールザー・ガーセミーというのは、この料理を考案した人の名前だそうです。この人物はその昔、ギーラーン州の支配者だったそうで、料理に非常に長けていたということです。日本の某薬局のチェーン店の創設者のような存在でしょうか。

それから、マースーレを含めたギーラーン州では、この他にもテヘランより魚や野菜をふんだんに使った郷土料理がたくさんあります。その中でも、野菜と赤インゲン豆、肉を煮込んだイランの定番料理ゴルメサブズィーを、この土地で収穫された野菜で作ってもらいました。これが最高においしく、ギーラーン州の郷土料理で是非お勧めしたい料理の1つです。

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オリーブが名産というこの村は、テヘラン周辺の乾燥地帯とは気候区分が異なっています。テヘランではもう本格的に夏の到来ということで相当に暑いですが、マースーレ村はとても涼しく、さわやかな陽気でしてクーラーがなくても生活できるということです。この山あいの村を出て、少し離れた町にいくと湿気を感じました。そもそも、ギーラーン州自体が、テヘランよりも降雨量の多い、日本に近い気候区分にありますので、この州全体のイメージが緑と考えてもよいのではないかと思います。オリーブの名産地でもあることから、日本の小豆島のような雰囲気を感じました。

 

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そのほかに、マースーレ近隣の観光スポットについても、ここで少々触れておきたいと思います。マースーレを含めたギーラーン州は、本当に見所の多いところであり、私自身もまだ全部は行っていないのですが、昨年このコーナーでご紹介させていただきました、フーマン行政区にあるルーデハーンの城砦は特にお勧めです。これは、一千段の階段を上る名所として知られています。もう少し足を延ばせば、ギーラーン州の中心都市ラシュト、他には、はすの花が咲き乱れるアンザリー沼で有名なバンダルアンザリーなどにも行けます。私自身、まだラシュトとバンダルアンザリーには行ったことがないので、これから是非訪れてみたいと思います。今後とも、イランの名所旧跡や景勝地を随時ご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。

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