旅行

ペルシャ湾の真珠;常夏のキーシュ島(2)

キーシュ島から少々離れたヘンドゥラビ島

ペルシャ湾を眺めながらのサイクリング

マリンスポーツも楽しめるキーシュ島

熱帯地域の象徴・ナツメヤシにかかる木漏れ日

イラン版「美ら海」に相応しいさんご礁の海岸

 

先月お話しましたように、現在メディアでは何かとペルシャ湾が注目されて、盛んに報道されています。そうした報道からは、ペルシャ湾は緊迫した危険な地域として連想されるかもしれません。しかし、実際にはこの歴史ある大きな湾は、石油や天然ガスが豊富に埋蔵されている戦略的な地域であるとともに、大自然や名所旧跡にあふれ、ショッピングや様々な娯楽・スポーツも楽しめる魅力的な行楽地でもあります。今回は、前回に引き続き、まさに「美ら海」のイランバージョンと言うに相応しい、このペルシャ湾に浮かぶイラン領の島の1つで、島自体がアミューズメント・アイランドというに相応しい、キーシュ島のさらなる見所や魅力についてご紹介してまいりましょう。

 

今回はまず、キーシュ鹿公園からご紹介してまいります。総面積が2ヘクタールに及ぶこの公園には、17のセクションに鹿やライオン、狐、ジャッカル、オーストラリア原産の鳥類などが飼育されています。

特にここでは、金網を張った敷地内に鹿が放し飼いにされています。さながら、バンビちゃんが近くで見れるような感じです。

 

ここには何種類もの鹿が放し飼いにされており、奈良公園で見かけるような鹿のほかにも、寒い地方に生息するヘラジカなども見られます。

 

キーシュ爬虫類展示場

この爬虫類展示場では、100種類以上もの爬虫類が飼育・公開されています。ここで見られる爬虫類は、マダガスカル産のイグアナやブラジル産の鳥取りグモ、アフリカ産のサソリ、東南アジア産の大型の蛇などです。

 

キーシュ大レクリエーション埠頭

このレクリエーション埠頭は1年10ヶ月ほどかけて建設され、2006年から一般来場者を受けれています。この埠頭の全長は437m、幅は18mにも及び、全体が数多くの支柱で支えられ、通路面には木板が貼られています。ここをそぞろ歩きすることで、さんご礁の海岸をはじめとする大自然の絶景や、海中を泳ぐ色鮮やかな熱帯魚が見られます。

また、この埠頭からは遊覧船も出ています。夜9時から深夜1時までの夜間クルーズでは、ディナーや音楽つきの遊覧が楽しめます。

 

そしてもちろん、この埠頭の周辺にはレストランや喫茶店など各種の施設が完備されているほか、小船での釣り、ボート漕ぎ、ジェットスキーなども楽しめます。

 

また、あえて埠頭に赴かなくとも、手近な砂浜で心地よい潮風に吹かれることも、乙なひと時をもたらしてくれます。夜桜ならぬ「夜の海岸」散策などもいかがでしょうか。

 

 

島内の旧貯水槽

さて、ここからはいくつかの史跡・名所をご紹介してまいりましょう。キーシュ島内には、かつて飲料水の備蓄用に使用されていた貯水槽がありました。これは、1992年に建設されたものですが、キーシュ島が急速に観光地化し、また島の総人口が増加したことから、貯水槽としての機能を失い、現在では島内の観光名所の1つとなっています。

この貯水槽の設計構造は、イラン中部ヤズド州にある貯水槽に倣ったもので、上の写真が示すように、ドームが2つ、及び言わば天然の風クーラーとも称される採風塔が4本あります。本来は、この採風塔から取り入れられた風を急速にドームの下に取り入れ、中にある貯水槽の水が冷却される仕組みになっていました。

夜間にライトアップされたこの貯水槽も、とても美しいものです。

ちなみに、現在のキーシュ島の飲料水は、淡水化装置により確保されているということです。

 

キーシュ芸術家ロード

キーシュ島の西部には、散策用の歩道にイランの一連の芸術家の胸像が立ち並んでいる「芸術家ロード」があります。ここに存在する芸術家の彫像は、20世紀の女流詩人パルヴィーン・エエテサーミー、音楽家・歌手のゴラームホセイン・バナーン、哲学者・神学者のモハンマド・タギー・ジャアファリー、音楽家シャリーフ・ロトフィー、絵画の巨匠ホセイン・ベフザードなどです。これらの胸像は、キーシュ島を訪れる観光客にイランの偉人への理解を深めてもらう目的で設置されています。

現代イラン女流詩人パルヴィーン・エエテサーミーの彫像。国民に広く愛されながらも、彼女はわずか34歳でこの世を去っています。

 

キーシュ島の昔ながらの文明が今なお残るバーグー村

キーシュ島の人々はかつて、島の南西部、東部、北東部に居住していました。この島の古の文明は現在、南西部にあるバーグー村という村落のみに、昔ながらの形で残されています。なお、バーグーという村名は、かつてこの村に住んでいた有力者の老女の名前に由来する、といわれています。

現在、この村落に住む人々はごくわずかであり、牧畜業を営む数世帯のみとなっています。彼らは、黒いテントを張って観光客を歓迎し、この地域の風俗習慣を披露しています。

 

ヘンドゥラビ島

また、キーシュ島から少々離れたヘンドゥラビ島に足を伸ばすこともできます。この島に行くには、キーシュ島からのチャーター便が最も一般的なようです。以下の地図が示すように、ヘンドゥラビ島はキーシュ島の西25kmに位置しており、総人口は200人ほどです。住民のほとんどはアラブ系住民で、その多くが漁業で生計を立てています。

 

上空から見たヘンドゥラビ島。

 

ヘンドゥラビ島は、総面積が23km2ほどのごく小さな島で、キーシュ島と比べると、それほど観光地化しておらず、原生的な自然が数多く存在しています。また、この島は15世紀にはポルトガルの支配下にあったことから、当時をしのばせるポルトガル人の大砲の跡も残されています。

 

さらに、大人も子供も一緒に楽しめる公園や遊園地もあります。そうした行楽施設の1つにスィーモルグ臨海公園があります。なお、スィーモルグとはイラン文学に出てくる伝説上の鳥で鳳凰に似た鳥とされています。

スィーモルグの像が立っている臨海公園の入り口

ここでは、いわゆる普通の観光・行楽施設に加えて、ペルシャ湾を臨むサイクリングコースや遊歩道が設けられています。ここでは、専用の自転車を貸してくれます。ペルシャ湾を眺めながらのサイクリングは最高です。

また、この公園のメリットの1つとして、ホテルに近いことが挙げられます。

 

さらに、オーシャン・ウォーター公園も付け加えておきたいと思います。この公園は、最も近代的な遊具施設を装備し、近年ではイランはもとより中東でもユニークな娯楽施設として知られています。

なお、この公園に関して特に注目すべき点は、この施設自体がカナダのホワイトウォーターウェスト社により建設され、しかも園内の遊具・施設の一部がベルギーからの輸入品であることです。

 

キーシュ島を訪れたからには、マリンスポーツも楽しみたいものです。常夏のこの島では、年間を通して様々なマリンスポーツが楽しめます。島内には、そのためのマリンスポーツ施設が設けられています。

ジェットスキー

ビッグボール

バナナボード

 

 

さらに、イラン中部の砂漠のようなラクダ乗りも楽しめます。

 

さて、名だたる観光地に来たからには、お土産も買って帰りたいものですが、ご心配なく。キーシュ島には大都市に勝るとも劣らない豪華なショッピングセンターのほか、伝統的なバザールも充実しています。

島内有数の商業施設・マルジャーンショッピングセンター

 

キーシュ最大とされるゼイトゥーン・ショッピングセンター

 

伝統的なスタイルのマルヤム・バザール

これまで2回にわたり、現在メディアで大きく取り上げられているペルシャ湾に浮かぶ、イランの美ら島・キーシュ島の見所やお楽しみスポットをご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。地図で見ると非常に小さな島であるにもかかわらず、大変数多くの魅力にあふれており、名所旧跡も数多く存在します。イラン本土とはまた違った魅力のあるキーシュ島も、ぜひ皆様の観光プランに入れていただければと思います。

今後も、イランの意外な観光名所を随時ご紹介してまいります。どうぞ、お楽しみに。

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。