アーモンドやピスタチオ、バラの花などで美しく盛り付けたカーチー
ついこの間新年が明けたかと思いきや、今年も早や2月末。世界では新型コロナウイルス予防ワクチンの接種もはじまり、この危機の早期の収束と東京五輪の開催が期待されています。しかし現実を見る限り、待望のワクチンも様々な問題をはらみ、またウイルスの影響も衰える兆しはなく、相変わらず世界各地で猛威をふるっています。
このため、いずれの国や地域におきましても、「自分の家が一番安全」、「ステイ・ホーム」、「不要不急の外出自粛」という傾向はまだまだ続き、ここしばらくはどうしても、自宅で過ごす時間のほうが長くなるのではないかと思われます。そこで今回は、自宅で手軽に作れるイラン式の間食の1つ「カーチー」の作り方をご紹介し、せめて皆様のご自宅にて西アジアの風味を味わっていただければと思います。
<用意する材料>;4人分
薄力粉;食事用スプーン8杯
砂糖;食事用スプーン6杯(お好みでハチミツでも代用できます)
サラダオイルまたはバター;喫茶用小スプーン2杯
水;コップ4杯
また、これらの基本となる材料のほかに、お好みでシナモン、サフランの粉末、カルダモン、ターメリック、バラ水を少々加えると、独特の風味のものが出来上がります。できれば、サフランの粉末を加えていただければ、全体色が明るい綺麗な茶色に整うようです。
<作り方>
1.薄力粉を鍋で、独自の匂いが出てくるまで弱火~中火で空炒めする。匂いが出てきたところで、サラダオイルまたはバターを加える。
または、最初にサラダオイルもしくはバターを鍋に溶かしてから薄力粉を入れて炒めてもOK.さらに、薄力粉を加える際にイランではふるいにかける場合もありますが、必ずしもふるいにかけなくても大丈夫です。
2.黒焦げにならないように注意しながら、サラダオイルまたはバターが薄力粉全体と混ざるように、また全体が明るい茶色になるまで炒める。なお、このときにお好みでターメリックを加えてもOK.
3.薄力粉全体がちょうどよい色になったところで水を加え、全体になじませる。それからさらに、鍋にふたをしてとろみがつくまで弱火で煮込む(この間、時折固まらないように混ぜる)。
最後にサフランやカルダモン、シナモンの粉末など、お好みの調味料を加えて出来上がり。
なお、このデザートはビタミンが豊富であることから、間食としてのみならず朝食として取ることも可能です。また各都市や調理する人によって少しずつ材料や調味料も異なってきます。特に、イラン南東部ケルマーン州ではこのデザートにピスタチオや胡桃、アーモンドなどのナッツ類が加えられることが多いとされ、さらに北西部の町タブリーズは、アゼルバイジャン語圏であることからその地元の言葉でグイマグと呼ばれるなど、何かと話題に事欠かないメニューでもあります。
また特に、バターや普通のサラダオイルの代わりに動物性のオリジナルバターを使用し、卵を加えたものはさらにカロリーが高くなることから、出産後の女性や療養中の人が体力の早期回復のための強化食として食することが多くなっています。このように、材料を少々変更することで、非常にカロリーの高い栄養食にもなりえるため、ラマダン期間中には断食開始前の早朝の滋養食として食されることも珍しくないようです。
乾燥ナッツやバラの花などを添えたカーチーの盛り付け例
なお、イランにはカーチーという言葉が使われていることわざも存在します。それは、「カーチーは、何もない(ペルシャ語でヒーチー)よりまし」というもので、日本語で言う「何もないよりはまし」に相当します。
このことわざは、カーチーは普通の食事としては物足りないかもしれないが、それでも何も食べられないよりはよい、ということに由来しています。
イラン式デザート・カーチーはいかがでしたでしょうか。ぜひご自宅で手軽に作ってみていただければと思います。