旅行

ペルシャ湾の港湾都市とゲシュム島の名所旧跡めぐり(2)

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今回も前回に引き続き、ペルシャ湾に浮かぶゲシュム島の見所についてお伝えしてまいります。ゲシュム島は、イラン南部のクラレンス海峡を隔てて、本土の港湾都市バンダルアッバースの対岸に位置しており、イラン本土には見られない景勝地や独特の雰囲気が見られます。

ゲシュム島を代表する大自然の不思議・マングローブ樹林

 

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まずは、ゲシュム島を代表する見所で、大自然の不思議の1つである、マングローブの林をご紹介することにいたしましょう。マングローブは、熱帯や亜熱帯の塩分を含む湿地や塩水の河口の汽水域に生息し、ラテン語による学名は、イランの医学者アブー・アリー・スィナーのラテン語名をとり、マリナ・アヴィセンナとなっています。マングローブは薬用効果もあり、その抽出液は乾燥肌などに効くということです。ゲシュム島のマングローブの林は、島の北部にあるラーフト埠頭の近辺に位置し、総面積が90平方キロメートルに及ぶ三角形をしています。この地域は、イランの自然保護区にも指定されており、満潮時の水域の深さは1メートルから1.5メートルほどになります。そもそも、ここにマングローブの林が出来たきっかけは、あるイラン人がインドから苗木を持ち込み、ラーフトの埠頭に植えたことだとされています。

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さて、今回は6人乗りの遊覧用のモーターボートに乗ることになりました。いざ、マングローブの林の中に入ってみると、時間帯はちょうど満潮時で、マングローブの樹林が水に浮いているような感じです。それぞれの樹木の高さは低いもので50センチ、一番高いもので4メートルほどと思われました。潮が引いている時には、マングローブの根元が水面に現れ、普通の林のように見えるということでした。また、聞くところではこの林にはペリカン、アオサギ、コウノトリ、カモ、カモメなどの野鳥が生息しているということですが、今回はアオサギの群れが見られました。さらに、この林には、蛙や海蛇、カニなども生息しているということです。

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見所の多いヘンガーム島

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さらに、ゲシュム島の周辺にはナーズ島、ヘンガーム島、ホルモズ島の3つの小さな島が存在します。ここでは、ヘンガーム島についてご紹介しましょう。この島の最大の見所の1つは、小船によるイルカのウォッチングです。4,5人の他のお客さんと共にモーターボートに乗り、沖合いに出て行くと、3頭から5頭ほどのイルカの群れが姿を現しました。この時ふと、子どもの頃に訪れた、千葉県鴨川市の鯛の浦が思い出されました。確かこの時は、遊覧船から餌を蒔いた時に真鯛の群れが姿を現したことを覚えています。しかし、ここヘンガーム島ではエサを蒔かなくとも、彼らは人間たちを見て興奮しているのでしょうか、頻繁に水面上に出てきます。調教師がいなくとも、彼らは何匹かで揃って水上に飛び上がり、さながら天然のイルカのショーを見ているようでした。しかし、彼らはシャッターチャンスを逃さないようにとカメラを構える私たちにはお構いなしに、すぐに水中に潜ってしまいます。これまでに、水族館でしかイルカを見たことがなかった私にとって、イルカのウォッチングは本当に印象に残りました。

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さらに、この島では毎年春になると、ウミガメの産卵のシーンが見られるということです。

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それから、この島のもう1つの見所はシルバーコーストと呼ばれる海岸です。その砂浜の砂を手にとって見ると、銀色に光る粒があるのが分かります。これは雲母の粒であり、このため夜になると、この海岸の砂粒が一面に光り、天然の夜景を見ることが出来ます。

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ゲシュム島の市街地をそぞろ歩き

さて、小船でゲシュム島に戻り、ペルシャ湾に面した市街地を歩いてみました。イランではあるものの、やはり本土とは大きな違いが見られます。先ず、気づいたのはこの町で見られるモスクの外面が、いつも見慣れているスカイブルーを基調とした、細かい化粧タイルによる造りではないことです。全体的に、クリーム色や白色を基調とした簡素なデザインで、ドームの大きさも小さめです。これはスンニー派のイスラム教のモスクだということでした。聞くところによると、イラン本土ではシーア派のイスラム教が多数派であるのに対し、この島ではスンニー派の人々が約半数を占めているということです。それから、町を歩いている人々の服装も非常に色鮮やかであり、黒いチャードルに身を包んだ人は少なく、色柄物のチャードルをつけている人が多く見られました。

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さらに、テヘランなどでは見られないもう1つの特徴として、女性たちがネガーブと呼ばれる赤や黒の仮面のようなものを付け、顔面の半分、或いは両目の部分以外を隠していることです。これは、イラン南部の広い範囲で見られる習慣であり、イスラムで女性に対して定められている服装であるヘジャーブの教えによるものだということでした。

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さらに、この町の女性たちの間には、ヘンナと呼ばれる植物の水溶液で、手足や腕に草花や幾何学的な模様を書く習慣があります。これは、化粧などと同様におしゃれの一環として行われており、専門の女性がヘンナの液の入ったチューブの先を直接、肌に当てて書いてくれます。私も試しに、右腕にきれいな唐草模様を書いてもらいました。30分ほどで、きれいな図案に出来上がり、これも今回の旅行の記念となりました。

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チャークーフの峡谷

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次に訪れたのは、ゲシュム島のもう1つの景勝地、チャークーフの峡谷です。これは、石灰を主成分とする堆積岩が雨と洪水により侵食されて出来た、深さ100メートルに達する谷であり、ゲシュム島の西部、即ちゲシュム市内から70キロ離れたところにあります。チャークーフという名称の由来は、この谷の入り口から中ほどにかけて掘削された道に由来します。即ち、これらの道には真水を確保する為の井戸や用水路が設けられており、ペルシャ語で、井戸を意味するチャー、そして山を意味するクーが組み合わさってこの名ができました。この峡谷は、四方に向かって広がる4つの谷で構成されています。南北に向かって伸びている谷は、入り口付近ではU字谷の形状で、比較的道幅が広く、傾斜が緩くなっていますが、南に向かって進むほど道幅が狭くなり、次第にV字型の谷に変わってきます。

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さて、いざこの峡谷に足を踏み入れると、両側にどっしりとした岩壁が延々と続いており、数十センチ或いは、数メートルにも及ぶ円形や楕円形などのいくつもの穴が開いているところ、地層の重なりが目立っているところ、不ぞろいな形の窪みがいくつも連なっているところなど、変化に富んでいます。通り道によっては、道幅が狭く、両側からトンネルのように湾曲した岩壁が迫っているため、光が少ないところや、細くて深い溝が出来ているところもありました。こうした穴や窪みは、数百万年もかけて現在の大きさに至ったということです。このような複雑な形の岩を見ていると、普段の実生活を離れた別世界に入り込んだような、何ともいえない不思議な感覚でした。

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ゲシュム島の料理とお土産

そろそろ夕食をとろうと思い、ペルシャ湾がすぐ目の前に見えるあるレストランに入りました。メニューに目を通すと、テヘランでも普通に食べられる代表的な料理のほかに、やはり魚介類を使った料理が見られます。ここでは、エビやサメを使ったメニューが出されており、今回はサメの肉を使ったサンブーセ、即ちサモサを試して見ることにしました。これは、薄手のパンにサメの肉と野菜のみじん切りを混ぜたものをくるんで、油で揚げたものです。よく知られる、サメ独特のアンモニア臭などは全くなく、ごく普通の白身の魚の料理として、夕闇に映えるペルシャ湾を眺めながら大変おいしくいただきました。ところで、夕食を済ませてから、近辺のみやげ物店で大変面白い土産物を見つけました。それは、表面にコーランの節が彫刻されている宝貝です。貝を使ったネックレスや装飾品などのお土産は、日本にも存在しますが、コーランの節を掘り込んでいるとは、さすがイスラム教国ならではのものだと感じました。

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現地の観光ガイドからのメッセージ

ところで今回は、ゲシュム島で観光ガイドを務めているファハーロッディン・サッファーリーさんにお話を伺うことができました。サッファーリーさんは、次のように語っています。

1.ゲシュム島の一番の魅力はどのようなところでしょうか?

―ゲシュム島は、イラン領でありながらテヘランやイスファハーンなどのイラン本土とはまた違った文化や雰囲気を有しています。イランの他の都市が真冬の一番寒い時であっても、ここゲシュムは快適な気温であり、そのような時にこそ思う存分観光を楽しむことが出来ます。この島の人々は皆気さくで、外部からの旅行客の皆様を歓迎しています。又、自然遺産や名所旧跡が多いことも、この島の魅力の1つではないかと思います。

2.ゲシュム島で、特にお勧めしたい見所はどこでしょうか?

―やはり何と言っても、大自然の魅力を代表するマングローブの林、チャークーフの峡谷、星の谷、イルカのウォッチングが楽しめて海がめの産卵が見られるヘンガーム島です。これらは、私たちゲシュムの人々が誇る大自然の宝物であり、イランの他の地域にはないと思われるもので、是非見学していただきたいと思います。

3.最後に、日本人の皆様に一言メッセージをお願いします。

―私たちは、ゲシュム島を訪れてくださる皆様を心より歓迎いたします。そのため、この島にも親日的な人々が多く、島国である日本の皆様なら、きっと親しみを感じていただけると思います。この島では、人々の笑顔が皆様をお待ちしています。自然の名所旧跡が多く、また日本のように海の幸も楽しめるゲシュム島に是非お越しください。

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ABOUT ME
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IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。