イラン情報

イランの美ら海天国・ペルシャ湾に広がる絶景

ゲシュム島の海岸に一面に散らばる貝殻

ペルシャ湾の航空衛星写真

昨年末からこれまで約8カ月にわたり、イランは一連の騒乱、そしてそれに続く戦争の影響で非常に苦しい時期を潜り抜けてきました。特に、去る2月末に始まった戦争で、イラン本土はもちろん、世界有数のエネルギー輸送の大動脈となっているペルシャ湾とその湾口に当たるホルモズ海峡が、にわかに全世界の注目を集めることとなりました。もっとも、戦争前の平常時も、日本が消費する原油の相当量がこの2つの戦略的海域を通って輸送されていたことから、既に周知のとおり、日本から遠く離れた海域でありながら、私たちの暮らしにおいて大きなカギを握っていました。そこへもってきて、この戦争によりペルシャ湾情勢が緊迫化し、ホルモズ海峡が閉鎖されたことでガソリンやナフサ、様々な産業用資材の供給・調達に大きな影響が出るなど、この海域をめぐる最近のニュースは非常に生々しい、きな臭いものであったかと思われます。

この半年近く、ネットを初めとしたニュースでイランをはじめ、ペルシャ湾、ホルモズ海峡という地名を見聞きしない日はほとんどなかったでしょう。そうした理由で、今や一般的には、この2つの海域はすっかり「一触即発の地域」「紛争地帯」というイメージが出来上がってしまっているようです。しかし、本当のペルシャ湾は決してそのような場所ではなく、紺碧の海が広がり、数多くの美しい熱帯魚を初めとする多様な水生生物が生息している他、内陸地帯には決して見られない絶景が広がっています。筆者自身ももうかなり前にペルシャ湾沿岸を訪れましたが、その際に目の前に開けるエメラルドグリーンの「美ら海」、そして延々と続く海岸に打ち上げられた、「美しい貝殻の絨毯」に思わず息を呑んだことを覚えています。

特に先月は、先代イラン最高指導者の一連の葬儀で持ち切りとなり、イラン国内の複数都市に加えて、シーア派の聖地を擁するイラクでも盛大な葬儀が執り行われました。その葬儀も滞りなく終了し、その後ひと悶着あったものの、とりあえず両交戦勢力は攻撃を停止しています。イランやペルシャ湾をめぐる緊迫した情勢は、確かに今なお完全に収束したとは言えないものの、ひところよりは幾分落ち着いてきたようです。そこで今回は本当に久しぶりに戦争関連の話題を離れ、「永遠のペルシャ湾」の魅力として、この湾に存在する知られざる絶景の数々、そしてそこに浮かぶ大小の島の魅力を余すところなくお伝えしてまいりたいと思います。

さて、まずはペルシャ湾の地理的な位置と、その湾内に浮かぶ島々をご紹介してまいりましょう。これまでほぼ毎日のように日本のメディアでも報じられてきたペルシャ湾は、首都テヘランからは陸路でおよそ1000㎞(主要都市ブーシェフルなど)ほど南にあり、東京から小笠原諸島ぐらいの距離をご想像いただければと思います。なお、テヘランからホルモズガーン州の中心都市バンダルアッバースには以下の地図の青線で示したような空の便もあり、多数の便が運航しています。

そして、バンダルアッバースは、最近船舶の航行問題などで注目されている、ペルシャ湾の湾口・ホルモズ海峡に面しています。以下の地図では、黒線で囲んだ部分に当たります。ペルシャ湾とその湾口・ホルモズ海峡(黒マルで囲んだ部分)

ちなみに、今回のレポートに出てくるペルシャ湾に面したイラン南部の主な州は、以下の地図の赤線で囲んだ区域です。左から順にフーゼスターン州、ブーシェフル州、ホルモズガーン州、そしてスィ―スターン・バルーチェスターン州となります。

また、以下の地図のように、ペルシャ湾に面している国はイランの他に左端のイラクの一部及びクウェート、サウジアラビア、バーレーン、カタール、UAEアラブ首長国連邦、オマーンなどとなっています。

上の地図でお分かりのように、ペルシャ湾はホルモズ海峡を通して外洋であるオマーン海、そしてインド洋へとつながっています。この湾の総面積はおよそ23万8000km2で、長さ約1000km、平均水深は100m、最深部は170mほどで、メキシコ湾及びハドソン湾に次いで、世界で3番目に大きい湾となっています。ちなみに、この湾に面した最も長い海岸線を持つのはイランです。

西アジアに位置する重要な水路としてのこの湾の歴史的な名称は、様々な言語で「ペルシャ湾」または「ペルシャ海」と訳されてきました。もっとも、筆者が中学・高校時代の地理の教科書には、ペルシャ湾またはアラビア湾という2つの名称で示されており、試験の答案ではいずれでも点がもらえたことを覚えています。しかしなから、イラン政府はこの湾の名称はあくまでも「ペルシャ湾」であると強く主張している他、イランでは毎年4月30日が「ペルシャ湾の日」に制定されるなど、この湾はイランで非常に重要視されています。ちなみに、この記念日は1622年に当時のペルシャ軍がホルモズ海峡からポルトガル海軍を駆逐した歴史的な軍事作戦の成功を記念して定められたものです。また、すべての国際機関において、この湾の正式名称は「ペルシャ湾」とされ、IHO国際水路機関は、この湾を「イラン湾(ペルシャ湾)」と呼んでいます。

ペルシャ湾といえば、ホルモズ海峡と共に今回のイラン戦争、中東情勢に関するニュースですっかりお馴染みかと思われます。そして、この湾を語るのに豊富な石油資源や天然ガスが埋蔵されていること、多数の油井の存在、そしてエネルギー輸送の大動脈には必ず触れる必要があるかと思います。

しかしながら、ペルシャ湾は決してこうした事柄だけに要約されず、美しい自然や多種多様な水生生物の存在も見逃せません。この大きな湾にはいくつもの島々が浮かんでおり、そのどれもが美しく、魅力的で、そして人を惹きつける魅力に満ちています。そのうちイラン領となっているのは最も大きいゲシュム島、そして観光地として特に有名なキーシュ島などです。左上からラーヴァ―ン島、ヘンドゥラビ島、キーシュ島、フォル―ル島、その下のバニー・フォル―ル島、さらに下のスィーリー島、その右隣りのアブー・ムーサ―島、その上の小トンブ島、その隣の大トンブ島、その上のゲシュム島とヘンガーム島、そのやや上のホルモズ島、そのやや下のラーラク島。これらのオレンジで示された島嶼部がイラン領。

これらの島々で訪れる観光客を待ち受ける楽しみは、湾の紺碧の海に支えられているという点で共通していますが、島々の壮大で驚くべき自然の魅力、そして歴史的な見どころはそれぞれ大きく異なり、どの島にも独自の魅力があります。そこで、今回の旅では、永遠のペルシャ湾へ飛び、この湾に浮かぶ島々や湾岸が醸し出す大自然の魅力の数々を写真とともにご紹介してまいりましょう。

「ペルシャ湾の窓」と呼ばれる岩穴からの日中と日没の絶景(ホルモズガーン州パールスィヤーン郡バンダルタバン)

「ペルシャ湾の窓」から見た揺蕩う多数の小舟

動物が走っているような海岸沿いの岩(ホルモズガーン州モクサル海岸)

奇妙な形の岩が続く海岸(ホルモズガーン州モクサル海岸)

横たわって寝ているような人の形をした岩(ホルモズガーン州バンダルレンゲ郡モガーム村)

尖った三角岩が連なる海岸沿いの街道(ホルモズガーン州バンダルレンゲ郡モガーム村)

天井に穴の開いている岩(ブーシェフル州バヌード海岸)

宝石のような貝殻の絨毯が広がるパールスィヤーン海岸(ホルモズガーン・ブーシェフル両州)

無数のカモメが飛来する海岸(ブーシェフル州)

紺碧のペルシャ湾は、まさに西アジアの美ら海というに相応しいものです。そして、この湾に浮かぶ島々の中には、ダイヤモンドのように輝く土壌を持つ島もあれば、きらめく夜景が楽しめる島、自然の芸術作品のような島もあります。

上空から撮影したゲシュム島のマングローブ樹林

エメラルドグリーンのペルシャ湾に面したホルモズ島の色鮮やかな赤い砂浜

土中や岩石に酸化鉄が含まれていることから赤く見える海岸(ホルモズ島)

様々な色の砂で創作された砂浜アート(ホルモズ島)

砂浜をラクダと共に歩く女性(ブームーサ―島)

様々な色の土壌で構成された丘陵(ペルシャ語では「虹の谷」を意味するダッレ・ランギーンキャマーン);ホルモズ島

虹色の洞窟として有名なランギーンキャマーン洞窟(ホルモズ島)

紺碧の海と見事に対照をなす赤土の海岸(スィ―スターンバルーチェスターン州マクラーン海)

イルカの群れ(ヘンガーム島)

満点の星空と光るビーチの共演(ヘンガーム島。夕闇に光って見えるのは海水に含まれる植物プランクトンだと言われています)

人の横顔のように見える断崖絶壁(ヘンガーム島)

紺碧のペルシャ湾に浮かぶブームーサ―島

透明度の高い海岸(ヘンドゥラビ島)

1966年夏に座礁したまま現在まで残るギリシャ船(キーシュ島南西部沿岸)

不思議な形の岩塩が連綿と連なる「沈黙の谷」(ホルモズ島)

魔神が出るという噂もある不思議な岩壁「星の谷」(ゲシュム島)

チャークーフ渓谷(ゲシュム島)

砂浜にシカが遊びに来ることも(ハールク島)

とにかく、この数か月間のペルシャ湾はイラン情勢の焦点として、日本や世界のメディアで多数のニュースが盛んに報じられてきましたが、残念ながらその内容は軍事攻撃や戦争、湾内の通航問題など、決して明るいニュースとはいえないものでした。しかしながら、ペルシャ湾は本来、他では決して見られない大自然の絶景や景勝地が数多く存在し、それこそ湾内の島めぐりツアーが企画できるほど、多くの見どころに恵まれています。筆者自身ももうかなり前にペルシャ湾を訪れたことがありますが、その時に初めて目にした、エメラルドグリーンに輝く紺碧のペルシャ湾は、今でも鮮明に記憶しています。スケジュールの都合で滞在できる日数が少なく、見たい箇所の大半は見学し切れず、必ず再訪問したいと決意したまま、現在まできてしまいました。現在は、遠く日本で戦争と情勢不安に見舞われたペルシャ湾地域を心配しながら、あの美しい海域にまた平和が戻り、思う存分周遊したいと願う毎日です。

このレポートをまとめている現在、とりあえず軍事攻撃の応酬は表向きには停止されていますが、双方の出方次第では決して予断を許さない状況のままです。このレポートでもほんの少ししかご紹介できないのが残念なほど、ペルシャ湾と湾岸、島嶼部地域は知られざる魅力に溢れています。いつの日か、ペルシャ湾全域を旅し、この海域の魅力を余すところなくこのレポートで皆様にお伝えできる日が来ることを願って、今月のレポートを締めくくりたいと思います。

独自の習俗や地形を誇るペルシャ湾岸地域

チャークーフ渓谷(ゲシュム島)

 

 

ABOUT ME
yamaguchi
IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信でニュース翻訳のほか、イランのことわざを週2回紹介しています。20年以上にわたりイラン滞在の経験があり、2016年からはイラン人の夫とともにテヘランから西に150kmほど離れたガズヴィーン州に滞在していました。現在は、イランと日本を行き来しながら、日本の皆様に普通のメディアには出てこないようなイランのホットな情報をお届けしています。