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イランで折り紙協会設立、第2回テヘラン折り紙コンテスト開催
先日、テヘラン市内の文化会館で、イラン折り紙協会とテヘラン市役所の主催により、第2回テヘラン折り紙コンテストが開かれました。イランでは、特にここ数年で、人々の間に折り紙という言葉が知られるようになってきました。今回は、この興味深いイベントについてお届けいたします。
イランでは、2006年に日本折り紙協会の認可を得て、在日経験のあるバフラーム・ダルヤーニー氏を理事長とし、イラン折り紙協会が設立されました。ダルヤーニー理事長は、日本滞在中に折り紙に出会い、その魅力に惹かれたとのことです。日本折り紙協会の検定に合格したダルヤーニー理事長は、母国イランでの折り紙協会の設立を思い立ちました。イランに帰国してからは、地道にイランでの折り紙の普及伝播につとめ、遂に昨年、第1回テヘラン折り紙コンテストの開催にこぎつけました。今年のコンテストの開催にあたり、ダルヤーニー理事長は次のように語っています。
「今回は、児童青少年の部と、成人の部の2つの部門に、全部で102名が参加しています。テヘラン市内だけでなく、今年は西部のケルマーンシャー州、北西部アルデビール州、東アーザルバーイジャーン州など、遠方からも多数の応募がありました。ちなみに、昨年開催された第1回のコンテストの参加者は72名でした。昨年と比べますと、応募作品の点数も増えたほか、全体的にレベルも上がってより複雑な作品が見られます。また、子どもだけでなく、色々な年齢層の方々が作品を提出しています。私が日本で取得したのは、いわゆる純日本的な折り紙でしたが、折鶴でイラン国旗をアレンジするなど、イラン人ならではの趣向を凝らした作品もあります。今後とも、このコンテストが毎年、回を重ねるたびに益々発展していくよう願っています」
昨年よりも大幅にレベルアップした、今年のコンテスト
さて、コンテスト開催日当日、会場となっているテヘラン市内の文化会館に足を運んでみました。小学生の子どもから大人までの幅広い年齢層による、大小様々な作品が並んでいます。また、個人の作品のほか、小中学生による共同制作、またミニチュアサイズの作品から、大人の背丈を越えるような大きなものまでありました。折り紙の代表である折鶴や、何枚もの折り紙を組み合わせた幾何学的な立体などの他に、非常に折り方の複雑な作品や、大型の動物、紙でできたイスやテーブル、オートバイなど、アイデアを凝らした作品が沢山展示されています。さらには、小さな三角形の部品を沢山組み合わせて出来た、折り紙ブロックによる作品、そしてテセレーションと呼ばれる、1枚の紙で連続した幾何図形を作り出す新しいタイプの作品もありました。
今回のコンテストの審査員の1人で、イラン折り紙協会の会員でもあるアフサネ・ヤアグービーさんは、イランでの折り紙の現状、今回のコンテストの総括、今後の課題や計画などについて、次のように語っています。
「現在、イランでは幼稚園などで折り紙が教えられており、折り紙の教師を養成する講習会も開かれています。今回のコンテストの最年少の応募者は6歳の小学生、最年長者は50代の男性です。学齢期の児童青少年に加え、デザインや装飾関係といった職業の人で、研究材料として折り紙に取り組んでいる人、又そういった分野には全く関係なく、趣味として折り紙を楽しんでいる人など様々です。昨年よりももっと手の込んだ作品が沢山提出されていることは、本当に喜ばしいことです。このことは、折り紙がイラン人の間で知られてきているということを示していると思います。今回の作品の審査に当たっては、芸術的な美しさ、創意工夫・アイデア性、応用性、複雑性、適切な紙を選んでいるかなどの点から評価しました。素晴らしい力作ぞろいで、審査に苦労しました。今後は、テヘラン在住の日本人の皆様も含め、折り紙愛好者の皆さんでもっと集まれる場を設けられたらと考えています。現在、私たちの最大の悩みは、折り紙に適した材質の紙が不足していることです。破れやすい紙や折り目をつけにくい紙では、素晴らしい作品が出来ません。この点を今後どう解決するかが、大きなポイントになると考えられます。そして、将来的には、折り紙に関する日本との共同プロジェクトや、日本から折り紙の団体、愛好者の方々にイランに来ていただくことも検討したいと思います。」
入賞者の声
今回、折り紙ブロックと呼ばれる小さな部品の組み合わせによる花瓶を提出し、入賞したテヘラン市内の女子中学生、シャガーイェグ・アリーヤーニーさんは、次のように語っています。
「私は、テヘラン市内に住む中学3年生です。折り紙は全くの趣味としてやっています。今回の作品を仕上げるのに、勉強の合間での作業でしたので、2ヶ月ほどかかりました。今は、学校の勉強が最優先ですが、その次に自分にとって大事なものは折り紙です。それぐらい折り紙に夢中になっています」
それでは次に、成人の部の入賞者の方にお話を伺ってみたいと思います。折りたたむ回数が非常に多い、複雑な折り紙の作品をいくつも提出したクーロシュ・サーレヒーさんは、今回の作品の中でも特に苦労したという、キングコブラという作品の制作過程なども含め、次のように語っています。
「私は、折り紙を始めて6年になります。私の正規の職業は、デザインと装飾で、子供向けのイベントの際によく使われる風船での装飾などを手がけています。折り紙を始めたのは、ある大手の靴屋さんで靴を買ったときに、おまけとして、紙を折りたたむことで色々なものができるという、紙遊びと題した折り紙の小冊子をもらったことがきっかけです。試しにつくってみたら、とても面白くて夢中になりました。それ以来、本格的に折り紙に取り組んでいます。今回出品した作品「キングコブラ」は、5メートルほどの長さの紙を570回も折りたたんで造りました。出来上がるまでには、何日もかかりました。難易度のそれほど高くない作品であっても、折り始める前に紙の質を確かめ、破れにくい紙を選ぶ必要があります。特にこの作品は、折りたたむ回数が多いため、折っている途中で紙が破れないように細心の注意を払いました」_
地方からの見学者の声
このコンテストには、テヘラン市内だけでなく、地方都市からも見学者が訪れていました。今や、折り紙はテヘランだけではなく、イランのかなり広い地域にまで広がっているといえそうです。それではここで、テヘランからおよそ300キロほど離れた中部の都市ハメダーンからやって来た女性、サミーレ・バーゲリーさんのインタビューをお届けしましょう。
「私は、ハメダーン市役所の管轄下にある数学教育センターの講師をしています。ここでは、教育の一環として、様々な年齢の青少年に折り紙が教えられています。私どもは、地元で折り紙の歴史や概要、広島で被爆した佐々木禎子さんのエピソードなどについて説明した、オリガミ・ムーブメントという雑誌を発行しました。ところで、折り紙というと、趣味や教育の一環として楽しむものというイメージがあるかもしれません。しかし、創造性を育むという、従来から知られている折り紙の芸術的な特長に加え、最近では折り紙の幾何学的な側面が脚光を浴びています。このことから、今後は航空工学、幾何学、コンピューターグラフィック、建築学などの分野に、折り紙が応用されていく可能性があります」
他分野にも応用されつつある折り紙と今後の展望
折り紙は、一枚の紙に秘められた可能性を最大限に駆使し、指先により、2次元の紙を3次元の作品に変えることができる、素晴らしい知恵といえるでしょう。この日本が誇る素晴らしい文化は、どれほど時代が下り、技術革新が進んでも、後世への遺産として残ると思われます。折り紙は、時代や言葉の壁を越えて世界中どこでも、他に特別な道具を必要とせず、誰でも楽しめるものです。紙を折るという動作のみで具体的なものの形を完成させるのが、折り紙の魅力といえるでしょう。無限の可能性、応用性、創造性が秘められた折り紙はまさに、日本が世界と共有する偉大な芸術です。今回のコンテストを見学して、次のようなことを確信しました。それは、日本の伝統文化である折り紙が確実にイランに根を下ろしており、さらにイラン人が今後折り紙の新しい世界を開き、そして折り紙の新時代の幕を開けてくれるのではないかということです。ちなみに、今回のコンテストには、在テヘラン日本大使館文化部の藤井さんも来場され、閉会式のスピーチでは、「イラン人の方々の折り紙のレベルの高さに圧倒された。イランの折り紙の今後が大いに期待できる」とのコメントを残しておられました。
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第2回テヘラン折り紙コンテストの最新情報はいかがでしたでしょうか。今回のコンテストで、イラン人の方々の作品を見せていただき、日本人である私のほうがもっと頑張らなくてはと、決意を新たにした次第です。今後とも、イランで行われる興味深いイベントについて、随時情報をお届けしてまいります。どうぞお楽しみに。